第3話 旅立ち

約束の日になった。

「お姉ちゃん…重たい。」

「アルノメアぁ~こんな妹も守れないお姉ちゃんでごめんねぇ~!!」

出発直前、お姉ちゃんが私を抱きしめた。

「良いよ、私がお願いしたことなんだし…。」

「これ…アルノメアがいつ泣いてもいいように、メイドたちに刺繡を教えてもらって、あなたの大好きな猫、縫い付けたからね、これが五枚あるからね!」

お姉ちゃんが笑顔で渡してきたのは、可愛い猫が角に一つあしらわれたハンカチ五枚。

「お姉ちゃん、一枚持ってて。」

「えっ…?」

「お揃い!」

「…ふふっ、そうね!」

良かった、お姉ちゃんが笑ってくれた。

「アルノメアー、そろそろ時間よ!」

お母様に呼ばれて門に向かった。

外にはもう迎えの馬車が止まっていた。

「アルノメア、行ってらっしゃい!」

「身体を大事になーっ!」

「時々お手紙送るからー!!」

私は馬車の窓から手を振った。

「行ってきまーす!!」

それが合図かの様に馬車は走り出す。

「わぁっ…。」

「揺れましたか?」

隣から、優しい声がした。

「初めまして、アルノメア様。あなたの執事を務めさせて頂く、ノエル・バロンです。」

「初めまして…」

ノエルさんという人は、私より五つ年上の人だった。

ふんわりとした茶髪が可愛い。

「さぁ、そろそろ着きますよ。」

馬車は大きなお屋敷の前で止まった。

「足元にお気を付けて。」

ノエルさんに手を引かれ、馬車を降りた。

「わあっ…人がいっぱい…。」

門から扉と、その先に続く廊下まで使用人さんたちが姿勢よく並んでいた。

その一番後ろに居たのは、とてつもなく背の高い男の人だった。

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