第72話 冥冥之志
「スキル発動【冥冥之志】」
俺はモンスターの群れに突入すると、新たに得たスキルを発動した。
突如として周囲が暗闇に覆われる。
俺を中心にドーム状のフィールドが出来上がった。
これが冥冥之志、視覚を奪う能力か。
さて、どのくらい通じるか……
モンスターはどちらかといえば動物に近い。
視覚に頼らずとも嗅覚などを駆使して俺の居場所を探るやつもいるだろう。
視界を奪ったとしても安心は出来ない。
油断はせず、一体一体丁寧にモンスターを屠って行く。
暗闇に覆われたモンスター達はその場に立ち止まり呆然としている。
どうやら本当に視界は奪われている様子だ。
よし、まずは1発———
拳を思いっきりモンスターの腹部に叩き込む。
モンスターは俺の攻撃を受け、その場に倒れ込み辺りをキョロキョロと見渡し始めた。
その様子はまるで自分の身に何が起きたか理解出来ていない様だった。
視覚は確実に奪えている。
やつは俺の居場所がわかっていない。
視覚以外にも俺の位置を探る手段はある筈だが、流石に嗅覚だけで戦闘にまでは対応出来ないみたいだ。
これなら剣を失った今の俺でもやれる。
一方的な殴打の繰り返し。
殴っては距離を置き、殴っては距離を置くヒット&ウェイ戦法。
地道にだが確実にダメージを与え続ける。
「これで———終わりだ。」
モンスター相手にどれだけ殴ろうと決定的な決め手には欠ける。
故に殴打の目的は弱らせる事にしかない。
戦闘用ではないがダンジョンに向かう際、いつも持ち歩く調理用ナイフ。
剣程の切れ味は期待出来ない。
しかし、モンスターから視認されず尚且つ弱っている相手ともなればただのナイフでも仕留められる。
気配を消して接近し、心臓部分へナイフを一気に突き立てた。
「まずは一匹完了だな。」
このスキル、なかなか使える。
正直、味方との連携は難しそうだが一対一や一対多などの俺が一人側の勝負では相当優位に働いてくれる。
それに逃亡なんかにも使えそうだし、これは当たりスキルだ。
「さてと……敵も沢山残ってる事だし刈り尽くすか。」
そこからは一方的な殺戮だった。
段々と暗闇内での効率的な狩り方を覚えて来た俺は暗殺者さながらの動きで的確にモンスターの急所を狙う。
奴らは抵抗出来る筈もなく、ただただ俺の経験値の糧となってくれた。
そして全てを狩り尽くした時、俺のレベルはまたしても上がる。
『レベル10に到達しました。ランクアップボーナスとして【
スキル【応病与薬】
任意の相手に自身が持つスキルを分け与える事が可能になる。
なるほどな。
俺が強くなる訳ではなく、仲間を強くするスキルか……
これは使いどころが重要だな。
信頼できる相手を見定めないと…
これで三進二退の効果である3回のランクアップボーナスは終えた。
また次のランクアップまで当分これでやり過ごさないと……
俺の戦いは意外にも一方的なものだった。
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