第71話 嬉しい誤算
光が収まる。
どうなった……
先に動いたのはキララだった。
スキルを発動させる為、巨人の頭上に立っていた彼女が重力に従い真っすぐ地面へと落下して来た。
何の抵抗もないその姿に俺は焦りを見せる。
気を失ってる…!?
マズい、助けに行かないと…
案の定、俺はワープが出来る。
空中で彼女をキャッチする事には成功した。
だがしかし、この時俺は重大なミスを犯してしまう。
キララの身の心配をするあまり、肝心なことを忘れていたのだ。
彼女が落ちて来たという事はスキルはどうなったのか?
当然、成功しているはずも無い。
ワープした先に待ち構えていた巨人の手に捕まってしまう。
「なっ!しまった——」
こいつにパワーで勝つのは不可能だ。
このままでは2人揃って握り潰される。
そう思っていたが、不思議な事にその手に力が込められる事はなく、俺たちはそのままゆっくりと地面に降ろされた。
「これは一体……」
何が起きている?
そう思った時、隣からキララの声が聞こえた。
「…ごめんね。ちょっと、この子のコントロールキツくて……気を失ってたみたい。だけどもう大丈夫。ちゃんと手に入れたよ。」
手に入れた。
つまり、この巨人は今キララの支配下にあるという事。
俺たちの作戦は成功した。
そしてちょうど同じタイミングで、頭の中に待ち望んでいた声が響いた。
『レベル10に到達しました。ランクアップボーナスとして【
遂に来た!!
新しいスキルだ。
それにしてもこのタイミングで来るとは……キララの和衷協同で仲間にしたモンスターも一応経験値は貰えるとは思いもしなかった。
だけどこれは嬉しい誤算だ。
いいぞ、風向きがこっちに回って来た。
スキル【冥冥之志】
一定範囲を暗闇の空間へと変化させ相手を引き摺り込む。
暗闇内では相手は当然何も見えないが、自分自身はこのスキルの発動者とそれに触れている者に限り、通常時と同じ様に見える。
なるほど……
どうやら、新しく覚えたスキルはデバフ空間を発生されるものの様だ。
これは使い方に苦労しそうだな。
なんせ、使い所を間違えたら仲間すらも危険に巻き込む代物だ。
だけどこれで流れは完全にこっちに向いて来た。
「キララ、作戦通りやれそうか?」
「うん、大丈夫だよ。っていうかこれでやらなきゃ、残りのモンスターを相手してくれてたみんなに顔向け出来ないでしょ。」
今なお、キララのファンたちが必死に進行を抑えてくれている。
今日会ったばかりの俺たちを信じて命をかけて時間を作ってくれたんだ。
「それもそうだな。無理でもやるしかないか。」
「そういう事。進も手伝ってよね。いい加減、このパレードを終わらせなきゃ。」
2人は笑い合い、駆け出した。
残りのモンスターを殲滅する為に。
15階層を襲うパレードは終わりを迎えようとしている。
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