第69話 ボコす②
はぁ…気は乗らないがやるしかないか。
キララの言う通り、俺が賭けに出るよりもこっちの方が成功率は高そうだ。
「俺たちがこいつに集中してる間、他のモンスターはどうするんだ?」
「そんなの他の冒険者にお願いしたらいいじゃん。私を誰だと思ってるの?」
そう言うとキララはクロと共に空高く舞い上がり、空中にて大声を発した。
「みーんなー!!私の事知ってるかな〜?みんなのアイドル、キララだよーー!!」
流石は元アイドルと言ったところか、その声は戦闘中の冒険者たちの耳にもしっかりと届いていた。
「みんなにお願いがあるの。このモンスター、かなり強力でこのままじゃ倒せそうにもなくて……だからお願い!キララに少しだけ時間をくれないかな?少しだけ…少しだけでいいから他のモンスターのヘイトを集めて欲しいの!!お願い…出来るかなぁ。」
目の端に涙を浮かべるという何ともあざとい行為。
だがそれは俺がキララとそれなりの付き合いがあるからそう思うだけで他の奴らは違った。
「うおおおぉおぉおお!!!!!やってやるぞぉおおお!!!!!」
「キララちゃーん!!!俺たちに任せてくれーー!!!」
ダンジョンは冒険者の巣窟。
冒険者の割合は男の方が圧倒的に多い。
普段はむさ苦しい男どもしかいないこの場にキララの様なアイドル級の美女が居れば、それは彼らにとっては女神の様な存在だろう。
男は女性の頼み事に弱い。
それもキララの様な美女からの頼み事ともなれば無条件に聞いてしまうのだ。
無駄にやる気を出した男どもが一心不乱にモンスターへと向かって行く。
その気迫ときたら先程まで逃げ回っていて奴らとは別人の様だった。
「流石は元アイドルだな。男の扱いはお手のものってか?」
「冒険者が単純過ぎるの。ほら、無駄話してないで私たちもやるよ。」
キララがクロと共に影に潜ったのを確認すると俺も巨人の元へとワープする。
「さてと、ここからはどっちがバテるかの勝負だな。さっさとギブアップしてくれるとありがたいんだが……」
再度、足元を重点的に斬り刻む。
何度も、何度も…
剣速と再生速度
どちらが勝るかの勝負。
拮抗しているかの様に思えたが、その時は突然訪れた。
パキッ……
不穏な音と共に刀身が空中に砕け散る。
巨体を斬り続けていた俺の剣は寿命を迎えてしまっていた。
しまった……
そう思った時には既に遅く、目の前には巨人の足裏が広がっている。
このまま踏み潰す気か…
神出奇没を使えば回避は出来た。
だが、突然の出来事に気を取られていた俺は一瞬でその判断を出来ずにいたのだ。
“死”
脳裏がその文字で埋め尽くされたその時、誰かに引っ張られる感覚がした。
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