第68話 ボコす
マズい…これは非常にマズい。
使いたくはなかったが奥の手を使うしかないのか…
『換骨奪胎』
一度見たスキルに改良を加え自分のモノへと変換出来る俺の切り札。
デメリットとして使用回数に限度があり、全部で3回しか使えない。
俺は既に神出鬼没を対象として使い、神出奇没を得ているので残りは2回。
ここで使うしかないのか?
出来ればとっておきたかったが……やるしかないのか……
悩む。
だが、どんなに考えてもこの状況を他に打破する手段が思い浮かばない。
仕方ないが、やるしかないか。
対象は…シェリアの一撃必殺にするしかないか。
だがあのスキルは元からデメリットの方が多過ぎて正直欲しくはない。
デメリットを消す様な変更は出来ないだろうし、威力を抑えればなんとかなるかも知れないがそれで巨人を倒せなければ本末転倒だ。
ちくしょう…どうしたらいい。
俺が巨人退治に頭を悩ませているその時だった。負傷した冒険者たちの避難誘導を終えたキララが戻って来た。
「進、状況はどんな感じ。」
「正直言って最悪だな。奴に対する有効打がない。俺のスキルじゃ火力不足だ。」
「そう……何か策はあるの?」
「ああ…まあ、一応な。」
俺はキララに作戦を伝えた。
「それってかなり危険な賭けじゃない?進はシェリアのスキルを使えたとしても、威力がそのまま引き継がれる保証はないんでしょ?」
「まあな。それにデメリットがそのまま付いてくるとなると俺は一撃必殺を放った後動けなくなる。その状況で残りの巨人を相手取るのは正直無理な話だよなぁ。」
八方塞がりか。
そう思ったが、キララが何故か不敵に笑みを浮かべる。
「そっか……じゃあここは私の策に乗って貰おうかしら。進のよりは成功率高いと思うけど。」
キララの策。
それはあの巨人を味方に引き入れるという事だった。
キララはスキルによってモンスターを従える事が出来る。
現状は高火力のモンスターを持っていないとしても、その場で調達する事は可能なのだ。
しかし、問題点はその調達方法。
キララが言うにはそれは——
「主従関係を教え込む事。一番手っ取り早いのが取り敢えずボコす。モンスターって言っても所詮は動物みたいなもんだからね。強い相手には逆らわないって訳。」
その理論はなんとなくわかる。
だが、問題はそこじゃないだろ。
「ボコすって……それが出来ないから困ってるんじゃ——」
「違うよ。私たちはあいつを殺せないだけ。一方的にダメージを与え続ける事は出来る。だったら話は簡単。あの子がもう戦いたくないって思うくらい、私たちでボコボコにする。そしたらその内私たちに従いたくなるんじゃない?ね?いい案でしょ。」
いや、まあ確かにトロいし斬り続ける事は……まあ出来る。
だけど、幾ら何でもそんな事……
「お前、鬼だな。」
「うるさい。これしか手段ないんだから仕方ないでしょ。納得したならこれで行くよ。」
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