第67話 超速再生能力

 自分よりデカい相手と戦う時、最初に戸惑うのは距離感だ。

 人型のモンスターならこのダンジョンに腐るほど湧いて出るが、ここまで大型となるとまだ体感した事がないな。


 その巨体から振るわれるパンチを神出奇没で回避する。


 最初などで少し大袈裟に後退したがこれで奴の射程距離はある程度理解した。

 奴の攻撃、威力は半端ないがスピードはトロい。

 まあ、これは大型モンスターの特徴でもあるのでそこら辺は変わってないか。


「じゃあ次は俺の番だな。」


 避けてばかりでは勝てる訳もない。

 いい加減攻め手に回らなければ……

 スピードは大した事ない。

 神出奇没に頼り過ぎると肝心な時に使えなくなる。

 出来れば緊急回避用にいつでも使えるよう温存しておきたい。

 ——となれば……


 俺は巨人の狙いにくい足元へと潜り込む。

 この位置ならば奴のパンチは届かない。

 とはいっても、次に襲い掛かってくるのは足技だろうが。


 俺の予想通り、巨人はその馬鹿デカい足で踏み潰そうとする。

 だが、予想通りという事は予想していたという事。

 来るとわかっている攻撃を避けれない程俺は間抜けではない。


 踏み付けてくる足を躱すと俺は回転で勢いを加えた斬撃を巨人の足にお見舞いする。

 場所にして丁度アキレス腱辺り。

 別に人間と同じ体組織だなんて思っていないが多少のダメージになってくれればいいが…


 本当は足を斬り落としたかったのだがこの巨体だ……

 俺の刀じゃ精々指一本斬り落とすのが限界。

 指を斬ったところで大したダメージにはならなそうだったのでアキレス腱を斬ってみたが……その効果は予想以上だったみたいだな。


 思いの外、アキレス腱へのダメージは大きかった様で、巨人は片膝を付いた。


 よし!これは嬉しい誤算だ。

 アキレス腱でこの巨人の動きを止めれると分かれば、いつでも殺れる!


 もう片方の足も同様に斬りつけようとしたその時、俺の目に驚異の光景が映る。


 ——な!?傷が……治っている…?

 …再生能力……だと……


 ただの再生能力ならまだ理解出来る。

 そういうモンスターがいるのは知ってるし、実際に何回か出会った事もあるから。

 だけど、こいつのは異常だ。

 ただの再生能力じゃない。

 俺が奴のアキレス腱を斬ってからまだ1分と経っていない。

 なのに奴の傷はもう塞がりかけていた。

 この再生は早過ぎる。


 超速再生能力って訳か……


 この巨人を倒す為に必要なのは、超高火力を誇る必殺の一撃。

 俺とキララのどちらも持ち得ない能力。

 いや、一応俺には起死回生が有りはするが……この巨人から一撃貰って立っていられる自信もないし……


 元々の高耐久に加えてこの再生能力。


「これはちょっと……マズイかもな…」

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