第66話 感謝
「ねえ、進!本当に大丈夫なの?……本当に私たちにやれるの?」
「少なくともお前一人でやるよりは勝率高いっての。取り敢えず、サポートよろしく!」
既に戦闘は始まっている。
ここで悠長にしていたら、それこそ余計な被害者が出てしまうかも知れない。
そうなってしまえば、キララはまた自分を責めるだろう。
俺は一足先に神出奇没を使用して戦場へと降り立った。
「全くもう…自分勝手なんだから。クロ、私たちも行くよ!!」
キララはクロを顕現させ、その背中に飛び乗る。戦いに向かう彼女の表情は、何処か晴れやかに見えた。
——デカいな。
戦場へ着いた俺が最初に抱いた感想はただそれだけだった。
この場にいる全てのモンスターがただただ大きい。
図体がでかいモンスターは耐久力・破壊力共に高水準の能力値を持っているので、正直言ってかなり厄介だ。
まあ、その分的がデカく攻撃が当てやすいという弱点もあるのだがあいにく俺とキララは攻撃系のスキルは持ち合わせていない。
さて…どうしたもんか。
考えている余裕もない。
迫り来る巨人のパンチを身を翻し避けながらその眼に短剣を2本投げる。
「まずは一体——」
神出奇没のワープを使い一瞬で巨人の目の前に転移すると腰に添えた刀でその瞳を斬りつける。
攻撃力が足りないのであれば敵の自由を奪う他ない。
どんな相手であろうと最も簡単に壊せて、行動を奪うという面で有効な部位。
それは目だ。
見えなければ敵が何処にいるかを把握する事さえ出来ないし、上手くいけば同仕打ちを誘う事だって出来る。
俺の思惑通り、目を斬られた巨人は敵味方関係なく暴れ出しモンスターを攻撃し始めた。
この辺りの冒険者は事前に逃がしてある。
残っているのは俺と周りを取り囲む20体ほどの巨人たち。
「いいねぇ…いい経験値になりそうだ。」
厄介な敵だが勝てない相手じゃない。
こいつらを全部倒せば俺はレベルアップする事間違いないだろう。
経験値稼ぎには絶好の場だ。
思わず笑みが溢れる。
そんな姿を見て、クロに乗りながら上空から怪我をした冒険者の避難誘導をしていたキララがその手を休め、進の隣へとやって来た。
「この状況で何笑ってるの?頭大丈夫?」
挑発……ではなさそうだ。
彼女の表情を見るとどうやら俺は本気で心配されているらしい。
「別に…ただつくづく俺とお前は相性が良いと実感していただけだ。」
「何それ、新手のセクハラ?キモいから二度と言わないで。……ま、進の言いたい事はなんとなくだけど伝わってるから…ありがと。」
それだけ伝えるとキララは再びクロの背に乗り避難誘導を再開した。
飛び立つ際に彼女の頬が赤く染まっていたのを進が気付く事はなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます