第65話 ギリギリ
「わかった?私、嘘吐きなの。だからこのモンスターの群れも全部私のせい。迷惑かけちゃってごめんね。後は私が……何とかするから…」
無理に決まっている。
この騒ぎは既に、キララ一人が動いてどうこうなる範疇はとっくに超えていた。
そんなことは自分でもわかっているだろうに……
ずっと自分のせいだと思い続けていたんだろう。
自分が仲間に加わる事で仲間たちは危険な目に遭ってしまう。
でも、やっぱり仲間は欲しい。
その気持ちが俺にはよくわかる。
三進二退というマイナス要素の多いスキルを持った俺もまた、ギルドになかなか加入出来なかった。
あの時、斗真と出会っていなかったら……
こいつは斗真と出会う前の俺だ。
昔の自分と姿を重ねてしまった俺にキララを見捨てる事なんて出来なかった。
キララの話を聞き終えた俺は、何を言わずに歩を進める。
「ちょ——聞いてたの!?この騒動は私が原因なんだから何とかするって——」
「どうやって?」
キララは俺の問いの何も答えない。
いや、答えないんじゃない。
答えられないんだ。
何故なら、策がないから。
ただ、これ以上誰かを巻き込まない為に口から出た言葉に過ぎない。
その証拠にキララは俯き地面を眺めているだけだ。
本当は助けて欲しい筈だ。
こいつだって好きでこんなスキルを手にした訳じゃないんだから。
「お前一人じゃどうやったってこの事態を収められる訳がない。」
「じゃあ……どうしたら…」
「何の為の仲間だ。パーティってのは足りない部分を補う為にある。お前に出来ない事は俺がやってやるよ。どうせ今から逃げ切れる訳もない。渡りに船っていうだろ。これも何かの縁だ。……それに、お前のスキルは俺と相性がいい。」
“千客万来”
このスキルは俺の“三進二退”と相性がいい。
“三進二退”はランクアップ時に絶大な効果を発揮するが欠点はランクアップまでの道のりが異常に長くなるというもの。
それこそ、他の冒険者の倍以上モンスターを討伐しなければランクアップに辿り着けないので時間がかかってしまう。
だが、この“千客万来”があれば勝手にモンスターが湧いて出るので経験値稼ぎには持ってこいだ。
それに俺はこの“千客万来”について一つ気付いた事がある。
それは——
「なあ…千客万来はずっと効果を発揮してたんだよな?今まで誰か一人でも死んだ仲間っているか?」
ずっと変だと思っていた。
こいつは強さに上限はないと言っていたが、それならキララは何故生きている?
冒険者を始めたての頃なんて弱いのが当たり前だ。
そんな状態で組んだ仲間なら、そのパーティで最弱だったのはキララの筈。
それなのに最弱だったキララが今こうして生きているという事は他のメンバーも重症を負いはしたが死んではいない可能性が高い。
その可能性に気付いた俺は千客万来の効果をこう予測した。
強さに上限はないのではなく、キララが組んだパーティが勝てるギリギリのラインの強さになっているのではないか…と。
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