三進二退~3歩進んで2歩下がる？レベルは中々上がらないけどランクアップボーナスで無双します~

第64話 嘘

　シェリアが隕石衝撃（メテオインパクト）を放った頃、その衝撃を遠くから感じている人物が2人いた。

　進とキララだ。

「お〜、あいつらやってるな〜」

　進はシェリア達の向かった方角を呑気に眺めている。

　2人は現在、イモムシモンスターとの相性が悪い事を察して他のモンスターを討伐する為に他の冒険者の元に向かっていた。

　道中、キララは俯いたままで何処か浮かない顔をしている。

「この辺でいいか…」

　進が急に立ち止まる。

　俯いていたキララは進が立ち止まった事に気付かず、彼の背中にぶつかってしまった。

「いったぁい……急に止まんないでよ！！」

　いきなり立ち止まった進に怒りを露わにするも、彼の真剣な表情を見てキララの怒りは鎮まっていく。

「な……何よ……」

「お前、何か隠してるだろ。わざわざ2人きりにしてやったんだ。包み隠さず話せ。」

　進は気付いていた。

　キララは何かを隠している事に。

　二手に分かれたのは勿論相性の問題もあったが、それ以上にキララの隠し事を暴こうという思惑もあっての事だった。

　進の真剣な眼差しを受け、キララはため息を吐くと覚悟を決めた。

「進は気付いてたんだね……よく聞いて。このモンスターの軍勢は私のせいなの。私の千客万来はモンスターを集めるスキル。それは教えたよね。」

　確かに聞いた。

　彼女の千客万来はモンスターを惹きつける力。

　だがその力で集まるのは雑魚モンスターばかりだという話だった筈。

「あの話、ちょっとだけ嘘吐いちゃったの。集まるモンスターの強さに上限はない。普段は弱い奴ばっかり来るんだけど、偶にこういう事があるんだよね〜。はは……参っちゃっうよね〜……本当にごめん。こんなんじゃ、仲間になんてなれないよね。」

　キララが嘘を吐いていた理由。

　それは、本当の事を言ってしまえば誰からも仲間と認めて貰えないから。

　存在するだけでモンスターを集めてしまう冒険者。

　そんな疫病神の様な存在を置いてくれるギルドなんて存在しない。

　だから偽った。

　全てを偽るには無理があるから、効力を少しだけ弱くして。

　仲間が欲しかった。

　ギルドに入りたかった。

　本当に、ただそれだけだった。

　最初に冒険者を始めた時、千客万来のせいでギルドを追われた。

　私と組んだ人が度々モンスターに襲われるせいで徐々に疑われ始め、スキルを隠していた事を非難された。

　当然だ。

　命に関わる事なんだから。

　その後も千客万来の噂が広まったせいで何処のギルドにも所属出来なかった。

　そして私は冒険者という夢を諦め、アイドルになった。

　アイドルは私に向いてたみたいでたちまち人気になる事が出来た。

　だけど私の心には、ぽっかり穴が空いていたんだ。