第57話 中央部
ダンジョン15階層
「中々来ないね〜。大丈夫かなぁ。」
「進さんなら大丈夫ですよ。きっと。」
先に15階層へと向かった2人は進たちが来るのを待っていた。
「……美玖ってさあ、進とどういう関係なの?な〜んか2人って妙な信頼関係?みたいなのあるわよねぇ。」
「どんな関係って……そんな、別に何にもないですよ。」
頬を赤い染めながらそう答える美玖。
その様子を見てキララは全てを悟った。
「へ〜そうなんだ。へ〜そっか。そういうねぇ。でもあいつ鈍そうだよ〜。大変だねぇ、美玖も。」
「な、何が…別にそんなんじゃ——」
その時だった。
いきなり2人の元に進たち3人が現れる。
「ふぅ、ったく世話かけやがって。」
両手に抱えた2人を地面に落とす。
「痛っ、も〜酷いなぁ。もう少し優しく降ろしてよぉ。」
「いてててて。進さん僕たちの扱い雑じゃありませんか?一応あれでも頑張ったつもりですよ。」
落とされた2人が抗議するも進は聞く耳を持たず、美玖たちの元へと歩み寄って行く。
「此処は?」
「15層の街の外れ。少し歩いた所に冒険者たちが集まる休息所があるからそこで休めるよ。」
5人が居る場所は15階層の隅。
セーフティゾーンは中央部となっており、そこには多くの冒険者が集まっている。
「じゃあ中央部へ急ごう。この2人はもう動けない。」
シルフィードとシェリアを指差す。
2人は乾いた笑みを浮かべた。
「じゃあ行きましょうか。シェリアさんは私が運びますね。」
「いや、いいよ。この2人は神出奇没で運ぶからさっきみたいに2人は先に行ってて。」
この方法が一番楽に人を運べる。
中心部まで2人を持ち運ぶなんて無駄に体力を消耗するだけだ。
「わかったわ。ところで、あのモンスターの群れはどうしたの?」
「全部倒した。この2人がな。」
「「全部!?」」
モンスターの群れを全滅させた事を知り、2人が驚く。
シルフィードととシェリアは頭を抱えながら照れた表情をしていた。
「あの数を……凄い。」
「へっへーん、どう?私をギルドに入れなかった事、ちょっと後悔したでしょ。」
「いえ、それはありません。確かにシェリアさんは凄いですけど、それとあの件は全く関係ないので。」
自慢げな態度を取るシェリアに対し、美玖ははっきりと言い捨てる。
美玖にとってシェリアはあくまで進に迷惑をかけた人。
何をしてもその評価は変わらない。
その評価を変えるには、以前の行いを払拭する程の所業を成し遂げなければ無理だろう。
2人の間に不穏な空気が流れる。
暫くの間、無言の時間が続くがその空気に耐えられなかったキララが美玖の手を引く。
「あははは。2人はちょっと訳ありみたいだね〜。こんな時はちょっと時間を置くに限るよ。ね、美玖。行こ。」
美玖とキララが中央部へ向かう。
「何さ。私だって反省してるのに……」
シェリアは地面を見つめながら、ポツリと呟いた。
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