第58話 大声疾呼
時刻は真夜中。
ダンジョン内に居る為、感覚でしか判断出来ないが夜中の2時くらいになる頃、進は15階層の見張りを務めていた。
15階層では東西南北に1人ずつ見張りを置き約3時間毎に交代する決まりがある。
時間はその日集まった冒険者の数によって変わる為、その辺りは臨機応変に対応している。
今回は15階層に集まっている冒険者がやけに多かった為、各チームから1人だけ見張りを務めればいいという形になった。
今回、進チームが担当するのは東門の2時から5時までの3時間。
1人だけでいいという話だったので今回のダンジョンで一番疲労が少ない進が見張りを引き受けた。
流石セーフティゾーンというだけあって静かだな。
まるで外の世界と変わらないみたいだ。
空を見上げればダンジョン内であるにも関わらず星空が浮かんでいる。
一体どういう原理なのかはわからないが、この空のおかげで此処に集まる冒険者は普段と変わらずぐっすり眠れているのだろう。
空を見上げながらぼーっとしていると不意に背後から何者かの気配を感じる。
振り返るとそこにいたのはキララだった。
「どうした?まだ休んでていいぞ。出発まで時間はたっぷりあるからな。今の内に体力を回復させておけ。」
「そうしたいんだけどね。……なんか、眠れなくって。ちょっとだけお喋りに付き合ってよ。」
本当に眠れないようで何やら思い悩んだ顔をしている。
キララは進の隣に腰掛ける。
「ねえ、進から見て私どうだった?
「相性は悪くないんじゃないか。俺が近距離で美玖ちゃんが遠距離、キララがモンスター使って俺たちをサポートしてくれれば戦闘の幅も広がるし。」
欲を言えば俺ではなく、本家の近距離専門アタッカーと全員の能力値を底上げするバフ系のサポーターも加われば理想的なのだが…
思い当たる節はある……のだが、そいつらは性格面に問題があるしなぁ。
それに、俺はもう何とも思ってないが美玖ちゃんが許してないっぽいし。
性格面で拗れたパーティなんて戦い以前の問題になる。
「あはは、そっか。相性いいか。……ねえ、昼間のモンスターの群れだけどさ。もし、あんなのがこの先何回も出て来るとしたらどうする?」
昼間の群れが何回も、ねえ。
「ま、苦労はするかも知れないが何とかなるんじゃないか。今回はあいつらの力を借りたが逃げるだけなら俺たちでも十分出来たし。」
「ほんと!!だったら——」
その時、15階層全土に激しい音が響く。
「——何事だ!?」
冒険者の眠るセーフティゾーンに大声が響き渡る。
「緊急事態だ!!西門にモンスターの群れが襲って来た!!冒険者は直ちに集まってくれ!!」
この声は緊急用に毎日中央部で警備をしている
彼のスキルは
ただただ大きな声を出せるだけのスキルで冒険者としては花開かなかったが、緊急時の伝達役としての能力を買われセーフティゾーンで寝泊まりしている。
彼がこうしてスキルを使ったということは——
「どうしよう……やっぱり私の……」
「俺たちも急ぐぞ!」
「う、うん。」
キララはどこか浮かない表情を浮かべていた。
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