第54話 セーフティゾーン
進の元にキララが詰め寄ってくる。
どうやら怒っている様子だ。
「ちょっと!いなくなるんだったら先に言ってよ!急に消えたら私たちも対処出来ないじゃない!」
「いや、悪かったって。俺だってまさか影に潜れるなんて思ってなかったし…」
「それにしても出て来るまで時間かかり過ぎ!クロも次からは私を最優先にしなさい。こんな男を待つ必要なんてないのよ。」
キララがファントムクロウを叱っている。
言葉が通じているのだろうか。
少し落ち込んでいるように見える。
てか、クロってファントムクロウの名前か。
いつの間に名前なんて付けたんだ。
「そいつってお前の意思で操作出来ないのか?」
「無理よ。あくまで私に懐いてるだけだもの。私の言葉は通じてるっぽいけどクロが何言ってるかなんてわかんないし。」
「ふーん、そんなもんか。思ったより便利じゃないんだな。」
進の言い草にキララの額には青筋が浮かび上がる。
「あのねえ…まあいいわ。ところでこの後どうするの?私は11階層に行っても大丈夫だけど。」
俺はこの中で一番疲労も少ないし全然余裕だから勿論先に進むのには賛成だ。
キララもいいとなると後は……
「美玖ちゃんは大丈夫?」
「はい。進さんに言われた通り魔力を温存してたからまだ余裕はあります。」
2人とも大丈夫か。
だったらここは先に進むのもありだな。
どうせいつかは先に進まなきゃ行けないしこの程度の疲労でユニコーンを倒せる機会は次いつ来るかわからない。
3人は11階層に進む事にした。
◇◇◇◇◇◇◇
ダンジョン14階層
思いの外、11階層以降に出て来るモンスターに手応えがない。そう感じた3人はこれを機に進めるだけ先の階層へと進んでいた。
現在はダンジョン14階層。
体感だがダンジョンに入って半日以上が経過している。
今日はこの辺で終わりかな。
「みんな、もうすぐ夜が来る。セーフティゾーンがある15階層に行くか、それとも地上に戻るかどうする?」
“セーフティゾーン”
ダンジョン内に存在するモンスターの出現率が極めて低い場所だ。
とはいっても完全に出現しない訳ではないが、セーフティゾーンには冒険者が多く集結する為、ローテーションで警備を担当する事で十分な休息を取れる仕組みになっている。
「私はお2人に合わせます。一人暮らしなのでどちらでも大丈夫ですし……」
「私は帰りたいかなぁ。お風呂にも入りたいし。進は?」
「俺か?俺は——」
背後から足音が迫って来る。
数は——1人、いや2人……人以外の足音が混ざってるな。
何かに追われてる?
そうしている間にも足音が近付いて来る。
「——構えろ、来るぞ!」
こちらへと迫って来る足音の正体。
それは数ヶ月前に俺たちを巻き込んだお騒がせ兄妹、シルフィードとシェリアの2人だった。
「「うわーーー!!!!そこの人たち、逃げて、逃げて!!」」
叫びながら走る2人の背後から夥しい数のモンスターが追って来ている。
「ちょ、あれは無理。ぜーーーーったい無理!」
「進さん、逃げましょう。」
キララと美玖は既に逃走の準備をしている。
でも、逃げるって何処に?
いや、ある。
近くにモンスターが寄って来ない場所が。
「2人とも、15階層まで走って!俺はあの2人を回収してから行く。」
進はそういうと、美玖にナイフを投げ渡した。
「それ、持っといて。」
美玖はそれだけで瞬時に進の考えを読み取り、先に15階層の方向へと走り出す。
「2人を助けたらすぐ来て下さいね。待ってます。」
「そっちも気を付けて。」
駆け出す2人に背を向け、モンスターの集団の前へと立ち塞がる。
「さあて、ちょっとだけ頑張りますか。流石に知り合いに死なれると後味が悪いしな。」
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