第53話 連携
ダンジョン10階層
新たにキララをパーティに加えた進たちはユニコーンとの戦闘に挑んでいた。
3人の目の前ではユニコーンとキララが召喚したファントムクロウが戦っている。
実力は拮抗している様で、雷撃を放つユニコーンに対し、翼に影の様なモノを纏い完全に防御するファントムクロウ。
「硬いな。あれがファントムクロウの能力か。」
「ファントムクロウは影を操る力を持ってて魔力を込めれば攻防どっちにも使えるの。それにこんな使い方も出来るんだよ。」
ファントムクロウが地面スレスレの低空飛行を始めたかと思うと次の瞬間、体が影の中に消えてしまった。
「あれがファントムクロウが使う影移動。影に潜ってる間は誰も攻撃する事は出来ない。そして——」
ユニコーンの影から姿を現すと胴体を翼が切り裂いた。
「潜れる影は自分だけじゃない。敵や木々、私たちの影の中にだって入れちゃうの。だからああやって不意打ちも出来ちゃうって訳。」
影に潜る事による奇襲。
これを初見で躱すのはまず不可能だ。
ファントムクロウ、味方なら心強いが今まで出会わなくて本当に良かった。
影からの奇襲に翻弄されたユニコーンの体には無数の切り傷が付けられている。
あれだけ弱ってるなら美玖ちゃんの魔法を使わなくてもいける。
「俺も出るから美玖ちゃんは援護をお願い。11階層を想定して、出来るだけ魔力は温存しといて。」
「わかりました。気をつけて。」
進は神出奇没を発動し、姿を消した。
「凄っ、進って瞬間移動出来るんだ。」
「進さんはいろんなスキル持ってますよ。神出奇没はその中でもよく使うスキルです。」
「へ〜、でも進どこ行ったんだろ?」
「あれ?そういえば……」
周囲を見渡すが進の姿はない。
そもそも進の神出奇没は今まで短刀などを利用してその場所に飛んでいた筈。
だけどこの場に進の武器らしきものは何処にもない。
一体何処に……
◇◇◇◇◇◇◇◇
一方その頃、進は影の中にいた。
ものの試しでワープ後にファントムクロウに飛び乗ってみたのだが、タイミングがいいのか悪いのか進まで影の中に引きづり込まれてしまった。
へぇ、ここが影の中か。
真っ暗で何もないな。
いや、上の方に何か写ってる。
あれは……外の様子か。
なるほど、こうやって中から外を確認して出て来てるって訳だな。
なかなか便利だな、この影は。
それにしても、まさかファントムクロウに飛び乗れば影に入れるなんて。
偶然とはいえ、これはなかなか使えるぞ。
美玖ちゃんが影に潜れば、魔力を溜める時間狙われなくて済む。
思いがけない発見にテンションが上がる進。
しかし、影を利用した戦闘に関するアイデアがどんどん湧いてきて、外の状況を確認するのが疎かになっていた。
突如、ファントムクロウが上空へと飛び立つ。
「おいおい、もう行くのかよ。もうちょっと此処にいても……」
上に上がる事で偶然見えた外の光景。
そこには近距離戦が苦手な2人がぼろぼろになりながらユニコーンと戦っている姿があった。
「やべっ、そういえば外にはあの2人しか居ないんだった。間に合えよ……」
ユニコーンの背後から飛び出すと同時にナイフを投げる。しかし、ユニコーンも馬鹿ではない。そのパターンは見切られていた様で、瞬時に背後の進たちの方へ体を向けた。
だが——
「これで挟み撃ちだ。」
最初に投げたナイフへとワープした進は再度、ユニコーンの背後をとる。
前方にファントムクロウ、後方には進。
2人の翼と剣がユニコーンの首を刎ねた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます