第51話 きらきら

 ユニコーンを倒した俺たちはダンジョンを後にした。


 自分たちの実力は大体わかったので、明日からは11階層に行く事を踏まえた上でユニコーンとの戦い方を模索する必要がある。

 今回のやり方では美玖ちゃんの魔力が大量に必要となってしまう。それでは11階層以降の探索が危ないかも知れない。


 彼女が新たに得たスキル『行雲流水』

 どの様な状況下に置いても、淀みのない精神を得る能力。


 これが美玖ちゃんが新しく得たスキルらしいが……はっきり言って使い道が分からない。

 俺に思いつくのは誰かと騙し合いをする際にポーカーフェイスでいられるという利点くらいだが、こんな能力いるか?

 俺も筋力上昇しただけだし……後一つ、何か俺たちのパーティに新たな武器があれば…


 考え事をしながら歩いていたせいで前が見えておらず、人とぶつかってしまった。


「おっと…すみません、不注意で。」


「いいよいいよ。ちゃんと前見て歩けよ。」


 ぶつかったおじさんは優しく許してくれた。

 おじさんに言われた通り前を向こうと顔を上げる。

 するとそこには人だかりが出来ていた。


 え?いつの間に??

 俺はこれに気付かなかったのか??


 流石にこの人数に気付かない筈がない。

 それ程の人数がいつの間にか進の前に集まっていたのだ。


 これは一体何の集まりだ?


 気になった進は先程のおじさんに尋ねる事にした。


「すみません。これって何の集まりですか?」


「何だ、お前知らねえのか?キララだよ、星川キララ。あの子を一目見ようと集まってる訳さ。ほら、あそこだ。」


 おじさんの指差す方向を見る。

 するとそこには100人に聞けば100人が可愛いと答えるであろう美女が笑顔で手を振りながら歩いていた。


 金色に染めた長髪に吸い込まれそうな瞳。

 幼さを残しながらも成熟した妖艶な肉体。

 あまりの美しさに目を奪われてしまう。


 星川に見惚れている俺を見て何故か自慢気に微笑むおじさん。


「どうだ?凄えだろ。」


「……今までアイドルに興味なかったんですけど、あんなに可愛いものなんですね。」


「馬鹿言え、星川キララが特別なんだよ。歌って、踊って、戦えるアイドル。それが星川キララだ。」


 歌って、踊って、戦えるアイドル。

 星川キララか……


 彼女の移動と共に散っていく人混み。

 俺はただその場から一歩も動かず彼女を見ていた。


 車に乗り込む星川。

 一瞬、彼女と目が合った気がした。


 って、俺がずっと見てたから合っただけだろ。そもそも勘違いかも知れないし……

 はぁ、アラサーにもなって俺、何やってんだ。きっと疲れてるんだ。さっさと家帰ろ。



 次の日、ギルドに来た俺は唖然とした。


 にやけ面で斗真が声をかける。


「お前来るのおせーぞ。なんと……このギルドに新人が入った。その名も——」


 斗真の隣に立つ女性が軽く会釈をしながら挨拶をする。


「星川キララです。よろしくね⭐︎」

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