冒険者アイドル

第50話 再戦

 ダンジョン10階層


 現在、この地に居るのは俺と美玖ちゃんの2人だけ。


 この場所に来たのも随分と久しぶりだ。


「とうとう此処まで来ましたね。」


 隣に立つ美玖ちゃんは体を少し震わせながらも、遠くに見えるユニコーンを見据えている。

 俺はそんな彼女の肩に手を添えた。


「緊張しないでも大丈夫だよ。一度は倒してるんだ。今度だってやれるさ。」


 冒険者にとって第一関門となる10階層。

 以前は晴太がいる時に戦い、結果として勝利を収める事が出来たがあれは晴太との戦闘でユニコーンが弱っていたという点が大きかった。


 今回は俺と美玖ちゃんだけ。

 でも、俺たち2人もあの時よりレベルは上がっている。

 大丈夫、勝利のビジョンは見えている。


 2人だけで10階層を突破しなければ先には進めない。そう決めて、今までダンジョンでスキルを磨いて来たんだ。


「じゃあ、作戦通りよろしく。」


 そういうと進は美玖を置き去りにし、ユニコーン目掛けて駆け出した。


 2人の作戦は前回同様、美玖の魔法が溜まるまでの間、進が時間稼ぎをするというものだ。

 あの時よりレベルは上がったとはいえ、進の火力不足は否めない。

 それなら神出奇没のワープ能力を持つ進が時間稼ぎをし、高火力魔法を使える美玖のサポートに回るという作戦は妥当である。


 因みに進は夜中に行っていた単独でのダンジョン探索によりレベル9まで到達している。


 ユニコーンに接近を気取られる前に短刀を周囲にばら撒く。


 これで準備完了だ。


「久しぶりだな。少しだけ遊んでやるよ。」


 前回同様、雷撃による広範囲攻撃を放つユニコーン。


 その攻撃は前回も見た。

 回避方法はもうわかっている。


 雷撃に当たらないように神出奇没を発動する。

 ユニコーンの雷撃は攻撃範囲は広いものの、攻撃範囲全てに雷撃が降り注いでいる訳ではない。

 攻撃自体は点であり、雷撃と雷撃の間には隙間が存在する。それさえ見極めれば後は神出奇没で回避可能だ。


 俺が不用意に接近する必要はない。

 美玖ちゃんの魔力が溜まるまでの時間稼ぎをすれば良いだけの簡単な仕事だ。


 雷撃を回避し続ける事、3分間。

 漸く美玖の魔法の準備が整った。


「進さん、準備完了です。いつでもいけます!」


 よし!じゃあ後は……


 前回同様、美玖の前に短刀を投げるとユニコーンをその位置へワープさせる。


艶美な閃光グロリアス・レイ。」


 美玖の全力の魔法がユニコーンに直撃する。


 前回よりも時間をかけて放った魔法だ。

 その威力も桁違いに上がっている。

 流石のユニコーンもこれを耐える事は出来ず、ユニコーンの体は砕け散った。

 それと同時に頭の中に音声が流れ込む。


『レベル10に到達しました。ランクアップボーナスとして筋力上昇を差し上げます。』


 お、来た来た。

 ランクアップボーナスだな。

 今回のは筋力上昇か…

 これはハズレだな。


 ランクアップボーナスといえど、毎回スキルや魔法が貰える訳じゃない。

 筋力上昇や魔力上昇などの基礎的な能力が少しだけ上がるだけの時もある。

 スキルや魔法の方が格段にパワーアップ出来るのだがこればっかりは運なのでどうしようもない。


 レベル10になると同時に三進二退の効果で8にダウンしてしまう。


 まあこれのお陰でまだまだチャンスがあるし、ステータス上昇も貰えるだけ得だ。


 確認を終えた俺は、隣に居る美玖ちゃんに話しかける。


 同じく彼女もランクアップした事だろう。

 一体どんなボーナスだったのかな?


「美玖ちゃんはランクアップした?」


「あ、はい。ランクアップしたんですけど……ちょっとスキルがよくわからなくて…」


 金川美玖

 スキル『行雲流水こううんりゅうすい

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る