第46話 迷惑料
シェリアが銀狼の牙に加入!?
そんな話聞いてないぞ。
慌てて斗真を見ると、彼も何が何だか分からないといった表情をしていた。
目を見合わせ小声で話し合う。
「おい、どういう事だ。なんであいつが加入してる。」
「知らねえよ。俺も初耳だ。」
斗真も初耳……って事はまたシルフィードの奴が許可もなく勝手に言い張ってるだけか。
取り敢えず正式に加入している訳じゃないので一安心だ。
俺は席を立つとシェリアの元へ歩み寄る。
「やっほー、昨日ぶり。」
屈託のない笑顔で手を振るシェリア。
「昨日の事忘れた訳じゃないようだな。よく俺の前に来れたもんだ。俺が昨日の事を通報したらお前捕まるんだぞ。」
「でもしないでしょ。進は優しいもんね〜。」
昨日の事などまるで反省してない様子だ。
本当に通報してやろうか。
イラッとした俺は携帯に手をかける。
するとシェリアが慌てて止めて来た。
「ああ、待った待った。昨日の事は反省してるってば〜。」
「反省してる様には見えないんだよ。」
「本当に悪かったって思ってるよ。いや……思ってます。ご迷惑をかけてすみませんでした。」
頭を下げるシェリア。
その口調や態度からもふざけている雰囲気は感じられな。
どうやら本当に反省しているみたいだ。
「……はぁ…もうあんな事するなよ。約束出来るなら通報するのは勘弁してやる。」
俺だって年下の女の子を通報するなんて行為はしたくない。
反省してくれるならそれでいい。
「うん、しない。絶対あんな事しない。」
真剣な眼差しで見つめる。
その眼に嘘はない様に思えた。
「それならいい。それで、ここからが本題だが……なんでお前がうちに入る事になってんだ?」
「ああ、それはねえ——「そいつは昨日付でクビになったんだよ。」
開いていた扉の方から聞こえる声。
そこにいたのはギルド『狂暴な鬼人』のギルドマスター阿知羅鎧武だ。
鎧武はそのまま斗真の元へと歩いて行くと懐から分厚い封筒を取り出し渡した。
「今回はうちの者が迷惑かけちまったみたいで申し訳ねえ。これはせめてもの謝罪だ。受け取って欲しい。足りねえってんなら上乗せするから好きな額言ってくれ。」
「へぇ迷惑料って訳か。大変だねぇ、大手ギルドともなればこんな事までしなきゃならねえなんて。当の被害者が許してるんだ。俺にとっちゃどうでもいい話だったが……金は貰えるんならありがたく貰っとくぜ。ついでに後100万上乗せしてくれると嬉しいねぇ。」
「100万か、わかった。」
懐からもう一つ封筒を取り出し、斗真に渡す。
その中身は現金で確かに100万円入っている様だ。
封筒の大きさからするに最初に渡された金は100万よりも多い。
シェリアのやらかし一つでどれだけの損害が出たんだ……っていうか斗真の奴、しれっとどうでもいいとか言ってなかったか。
やっぱり碌でもない奴だな。
そもそも被害に遭ったのは俺なんだからあの金も俺の物だ。
あいつ絶対あの金貰おうとしてやがる。
「そいつはもううちのメンバーじゃねえ。後は好きに扱ってくれ。まあ、そいつ自身はこのギルドに入りたいみたいだけどな。どうやら気になる奴がいるっぽいし。」
そう言いながら俺の方を真っ直ぐに見つめて来る。
「シェリアも入りたいって言ってるんですし、いいですよね。」
「駄目だ。そいつは何仕出かすかわかったもんじゃねえ。俺は反対だ。」
「別に俺はどっちでもいいぞ〜。」
賛成派のシルフィードに反対派の俺。一番肝心な斗真は興味がない様でどちらでもいいといった感じか。
だとすると最後は……
全員の視線が美玖ちゃんに集まる。
「え?私ですか?」
「美玖ちゃんはどう思う?彼女…シェリアを銀狼の牙に入れるかどうか。美玖ちゃんの素直な意見を教えて欲しい。」
「……私は———」
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