第45話 加入?

 シェリアとの決闘の翌日。


 あの日、怪我のせいで夜中にダンジョンに入っていた事が美玖ちゃんにバレてしまい、こっ酷く怒られた。

 まあ、彼女の怒り方自体は可愛らしいものなのだが、本当に困るのが途中で悲しそうな顔をしてくるところだ。

 元々、小動物の様な雰囲気を醸し出しているのだが、彼女が泣いている姿を見ると小さい子を虐めてしまったかの様な…なんだか自分が本当に悪い気がしてしまい、物凄く罪悪感を覚えてしまう。


 別に悪い事はしてないと思うんだけどなぁ…

 彼女曰く、自分も一緒に連れて行ってくれないと不安になるし悲しいそうだ。

 そう言って貰えるのは嬉しいんだけど、やっぱり夜まで美玖ちゃんに付き合って貰うのは気が引けるというものだ。


 美玖ちゃんの説教を終えた俺は一息つくためにいつもテーブルで新聞を読んでいる斗真の向かいの席に座る。

 俺が正面に座った途端、斗真は新聞から目を逸らし話しかけてきた。


「よう。こっ酷く怒られてたな。」


「まあな。別に1人で探索くらい出来るのに…」


「そんな事言ってるとまた怒られるぞ。ダンジョンでは何が起きるか分かんねえからな。お前が無茶しねえか心配だったんだろうよ。」


 まあその気持ちは分からなくもないが…


「そんなに心配するもんかねぇ…」


「あの子には頼れる存在がお前しかいねえんだ。それ程大事に想われてるってこった。」


 美玖ちゃんを眺めると、部屋の隅で1人依頼書と睨めっこしている。


「お前がいるだろ。後、一応シルフィードも。」


「俺らは駄目だ。多少気は許してるかも知れねえけどいざって時にあいつが頼るのはお前だよ。」


 そうか?昔と比べたら随分明るくなったと思うし、魔法の修行は斗真とやっている。別にそんな事はないと思うけどなぁ。


 そんな話をしていると、突如ギルドの扉が激しく開かれた。

 みんなの視線が集まる中、入って来たのは超ご機嫌そうな顔をしたシルフィードだった。


「シルフィード、乱暴に開けんな。壊れたら弁償して貰うからな。」


「はーい。すみませんでした。」


 満面の笑みで謝罪している。

 なんだか気味が悪い。

 注意した斗真もそんなシルフィードの顔を見て若干引いているようだ。


 様子がおかし過ぎる。


「おい、お前なんでそんな上機嫌なんだ?」


「へへへ、よくぞ聞いてくれました!」


 俺の問いかけを聞いた途端、待ってましたと言わんばかりにテンションを上げる。


 こういう時って大体碌な事ないんだよな。


 シルフィードのテンションが上がり続ける一方、俺のテンションは下がり続けている。

 嫌な予感しかしない。


「なんと……今日から、シェリアが銀狼の牙に移籍する事になりました!!」


「へへへ、よろしく〜」


 開いていた扉から入って来たのは忘れもしない、昨日散々な思いをされられた女、シェリアだった。

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