第44話 不意打ち上等
「あーあ、探しに行かなきゃ駄目だよね〜。どこまで飛んでっちゃったかなぁ。……それにしても、案外弱かったな。期待し過ぎちゃってたのかも。」
シェリアが進を探しに行こうとしたその時、背後から攻撃の気配を感じ取ったシェリアは慌てて防御の態勢を取る。
「スキル『————』」
しかし、防御は僅かに間に合わず体は弾き飛ばされてしまう。
「いったぁ……誰?いきなり攻撃して来たのは……って進!?」
そこにいたのは進だった。
服はボロボロで体中の至るところから出血している。左腕はだらーんと下がっており、力が入っていないように見える。
「お前、少しは加減しろよ。」
満身創痍の進を見ながらも、シェリアの目はキラキラしていた。
「すっごーい!さっきの耐えたんだ!やるじゃん。よーし、まだまだ楽しめそうだね♪」
渾身の一撃を耐えた存在。
そんな人物に出会えたシェリアは絶賛大興奮中で進の声など聞こえていない。
戦いたい。
ただそれだけが頭の中を埋め尽くしている。
「じゃあもう一度、猛虎翔掌……あれ?」
もう一度必殺の一撃を打ち込もうと構える。しかし、体に力が入らずオーラは出ない。
「はぁ…本当に戦う事しか考えてないんだな。自分の体見てみろよ。」
進に言われ、シェリアは自身の腕を見る。
そこには赤黒く腫れ上がった両腕の姿があった。腕だけじゃない。自覚をした瞬間、身体中を激痛が襲ってきた。
堪らずシェリアはその場に崩れ落ちる。
「一体、私の身体に何したの?」
「何って…スキルだよ。お前が油断したあの時、俺もスキルを使ったんだ。」
進はシェリアの猛虎翔掌のダメージを利用し、起死回生を発動した。
アドレナリン全開だったのでシェリアは気付かなかっただろうが、不意打ちを受けたあの瞬間、勝負は決まっていたのだ。
「まさか私が負けるなんてなぁ。進って強いんだね。それにしても、最後の不意打ちどうやったの?私の周りに短剣は落ちてなかったんだけど。」
「俺のスキルは別に短剣だけに移動出来る訳じゃない。それだけの話だ。」
「……能力、教えてくれないんだ。」
「当たり前だ。お前みたいに襲って来る奴がいるのにわざわざ自分のスキルを晒すか。同じギルドのメンバーでもあるまいし。」
進はそういうと落ちてる短剣を拾い上げ、最後に倒れていたシェリアを背中に乗せた。
「……置いてかないんだ。」
「あのなあ。今のお前をこんなとこに置いてったらモンスターにやられるだろうが。」
「でも私、また進の事襲うかもよ?ってか絶対襲うけど。」
「少しでも恩を感じてるならやめてくれ。もしどうしても戦いたくなったらせめてちゃんと決闘を挑め。こんなダンジョンで命のやり取りする必要ないだろ。それなら暇な時受けてやるから。」
「ふ〜ん。そっか……また戦ってくれるんだ。」
どうやら都合の良いとこだけ受け取ってそうだが……まあ多少は大人しくなったのでよしとするか。
進の背中でシェリアは小さく呟く。
「そうか……同じギルドなら能力教えてくれるって事だよね。」
「なんか言ったか?」
「ううん。こっちの話。気にしなくていいよ〜。」
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