第40話 真夜中の出会い
時刻は真夜中。
暗くなった街中を進は歩いていた。
彼の目指す先はダンジョン。
進は1人でダンジョンに潜る為、誰にも見つからない真夜中に行動していた。
美玖ちゃんは魔法を覚え出してから少しずつだけど強くなっている。
シルフィードも動機はなんであれ、妹を救いたいという一心で毎日ゴミ拾いや下水道の掃除といった雑用をこなしている。
2人とも自分の目的に向かって進んでるんだ。
一番の年長者である俺だけ置いていかれる訳にはいかない。
俺の場合、一番手っ取り早く強くなる方法はランクアップする事。
俺と他の人との違いは得られるランクアップボーナスの数だ。
数の優位を活かすためには他の人よりもモンスターを倒してレベルを上げるしかない。
それにまだ美玖ちゃんにお金を返してない。
モンスターを倒しまくれば経験値と金を稼げて一石二鳥だ。
街から明かりは消え、人々は寝静まっている。
そんな静かな街を歩いていると遠くに人の後ろ姿が見えた。
髪が長い…女性か?
こんな遅くに珍しいな。
酒でも飲んでいたのだろうか。
一点を見つめ、その場に立ち尽くしている。
少し心配になった進は女性に声をかけてみる事にした。
「あの〜、大丈夫ですか?」
いきなり声をかけられた女性はびっくりしたのか体をビクッとさせた後こちらを振り返る。
「ああ、ごめん。ちょっとぼーっとしてただけだから大丈…夫…」
振り返った女性は見覚えのある顔をしていた。
「お前は確か…シェリア。」
間違いない。
髪を下ろしているので印象は少し違うがこの顔は紛れもなくシルフィードの妹、シェリアだ。
「貴方は……え〜と……」
「そういえば自己紹介してなかったな。
ギルド『銀狼の牙』所属、前山進だ。
よろしく。」
「もう知ってるかも知れないけどギルド『狂暴な鬼人』所属、シェリア・ミカエラ。
よろしく。」
俺が差し出した右手をシェリアが握り返した。
「それにしても、こんな夜更けにどうして外に?シルフィードが心配するぞ。」
そういうとシェリアはバツの悪そうな顔をしながら答えた。
「え〜と…まあそのバカ兄貴と喧嘩しちゃって……家出中?って感じ。進は?」
「ちょっと小銭稼ぎにな。」
「へぇ、そうなんだ。」
シェリアがニヤリと笑みを浮かべる。
その表情を見た瞬間、なんだか嫌な予感がした。
「ねえ、それ私もついてく。私とパーティ組んでみない?」
シェリアとパーティを組む…か。
厄介な事を言い出すなぁ、こいつも。
別にパーティを組むのが嫌という訳ではない。ただ俺の中でどうしてもあの日、鎧武が言ってた『シェリアの性格に難がある』という言葉を忘れられずにいる。
兄のシルフィードがアレだ。
今のところまともに見えるシェリアだが、一体何を仕出かすかわかったもんじゃない。
触らぬ神に祟りなし。
関わらなくていいなら下手に関わるべきじゃない。
よし、断ろう。
「今日は1人で潜りたい気分なんだ。悪いけどパーティを組むのはまた今度……『ああ、そうだ。あの時一緒に来てたあの女の子、今日は居ないんだぁ。』
断ろうとした瞬間、声を被せる様に話し出した。
「あの子に言っちゃおうかなぁ。進が昨日、夜中までダンジョン探索してたって。」
この野郎、俺が美玖ちゃんに隠れてダンジョン探索しに来た事に気付いてやがった。
おおかたシルフィードが喋ったんだろう。
あいつ口軽そうだし妹には何でも話すだろうしな。
「はぁ、仕方ない。」
「やりぃ。宜しくね、進。」
やっぱりシルフィードの妹だ。
鎧武が言ってた言葉の意味が少しわかった気がした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます