第39話 方針
結局リザードマンとシルフィードの戦闘は終始リザードマンが圧倒していて勝負にならなかった。
シルフィードのやった事はといえばただ拳を構えて待ち構えるだけ。
構えや型なんかは様になっているが体がまるで追い付いていない。そんな感じだった。
俺は少し離れた位置で座り込んでいるシルフィードに声をかけに向かう。
あの時の言葉…聞き間違いじゃなければあいつは何かを隠している。
「シルフィード、お前俺たちに何か隠してないか?さっき駄目かって言ってたよな。あれはそういう意味だ?」
「いや…その〜最近なんでかスキルを使うと力が抜けちゃうんですよね。前まではそんな事なかったんですけど……」
スキルを使うと力が抜ける?
そんな事あるわけ……いや、ありえるか。
俺のスキル『三進二退』も普段はデメリットしかない力だ。
しかしその分ランクアップ時に得られる力は強大。あいつの『自業自得』も同じようなものなのかも知れない。
『自業自得』
その名の通り良い行いをした者には相応の強化が与えられ、悪い行いをした者には相応の退化が行われる。
昔のシルフィードならいざ知らず、ここ最近のシルフィードは妹の事を思うあまり他人に迷惑をかけ続けている。
弱くなるのは当然だ。
「それがお前のスキルのデメリットってとこだろ。スキルは何も便利なものばかりじゃない。まずはいい行いをするとこから始めるしかないな。」
「そんなぁ…早くシェリアを連れ戻したいのに…」
シルフィードが地面に膝をつき落ち込む。
俺の考察が正しければシルフィードの日頃の行いを正せば力は元に戻る筈。
ボランティアでもさせてみるか。
街の人達にも感謝されるし、ギルドの名も宣伝できる。
我ながらいい案だ。
俺たちから少し離れた所で魔法の練習をしている美玖ちゃんに声をかける。
「シルフィードの実力は大体わかったからギルドに戻ろうと思うけど美玖ちゃんはどうする?」
美玖ちゃんは現在魔法の練習中だ。
魔導書を読み、理解出来たものをモンスター相手に実践する。
こうした反復練習を行う事で実戦で使える魔法を増やしていこうという作戦らしい。
「そうですか……じゃあ私はもう少しだけ練習して帰ります。2階層くらいでやるので安心して下さい。」
2階層か。
それなら安心だな。
「そっか。じゃあ2階層まで一緒に行こうか。」
シルフィードはボランティア、美玖ちゃんは魔法の特訓か。
2人の今後の方針は固まって来てるな。
俺も俺に出来る事をやらないと……
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