第38話 自業自得

 ダンジョン5階層


 現在、俺と美玖ちゃん、それにシルフィードの3人はダンジョンに来ていた。

 取り敢えずギルドに入れるかどうかは別としてシルフィードの実力を図ることが目的だ。

 この男は無視してもどうせギルドに来るので、それならせめてクエストを手伝わせた方がまだマシだ。


「お前のランクとスキルを教えて欲しい。連携に重要だからな。」


「では改めて自己紹介します。僕の名前はシルフィード・ミカエラ。ランク2のレベル4、スキルは『自業自得』と『九死一生』です。2つとも使い勝手が悪くって……」


 スキル『自業自得』

 日頃の行いを元にステータスがアップしたりダウンしたりする能力。

 そしてもう一つ、スキル『九死一生』

 異常な生命力を得られるだけの能力。


 まあお世辞にも強い能力とは言い難いな。

 戦闘向きとは思えないしこれでよくあの狂暴な鬼人の入団試験に一度は受かったものだ。


「それじゃあ試しに戦ってみてくれ。俺らは後ろから見とくから。危なくなったら加勢する。」


 取り敢えずは彼の戦い方を見てからだ。

 そうしないと連携も何もあったもんじゃない。

 因みにだが俺と美玖ちゃんはここ数ヶ月の探索でレベルアップを果たしていて、俺がランク2のレベル7。美玖ちゃんはランク2のレベル9。5階層のモンスター相手なら楽勝だ。


「あんまり戦闘は得意じゃないんだけどなぁ…」


 嫌々ながらシルフィードが歩いて行く。

 彼の向かった先にいるのは二足歩行をしているトカゲの様なモンスター、リザードマン。素早い動きが特徴的であり、稀に冒険者から奪い取った武器を使う個体もいる為注意しなければいけないモンスターだ。


 まあ、今目の前にいる奴は武器を持っていないから普通のリザードマン同様ただ動きがちょっと早いだけ。シルフィードの実力を測るにはちょうどいい相手だな。


 リザードマンを前に立ち止まると息を整える。


「よし、行くぞ。スキル『自業自得』発動。」


 そう叫ぶと同時にシルフィードの体が光始める。


 あれが自業自得。

 強化魔法のような力か。

 ああやって身体能力を向上させて戦うのがシルフィードの戦い方なんだろうな。


 光が消えるとシルフィードは拳を前に突き出す様に構えた。


 あれは、徒手空拳か。

 体術が得意そうには見えないけど……大丈夫なのか?


 リザードマンがシルフィードに襲い掛かる。


 さあ、シルフィード。

 お前がどうするか見せて貰うぞ!


 次の瞬間、シルフィードの体は宙を舞う。


 リザードマンの動きに反応出来なかったシルフィードは勢いそのままに叩き込まれた尻尾を避けること叶わず吹き飛ばされてしまった。


 運良く俺の元まで飛ばされて来たので地面に落ちる前にキャッチする。


「おい、大丈夫か?」


 そう声をかけるがシルフィードは心ここに在らずといった感じで自分の手を見つめながらぼそっと呟いた。


「やっぱり駄目かぁ。」


 駄目?一体どういう事だ?

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