第35話 参上
ギルド『狂暴な鬼人』
純和風の屋敷の様な建物。
そこがギルド『狂暴な鬼人』のホームだ。
「おうおう。なんじゃワレ、うちのギルドになんか用でもあるんかい。」
今、俺たち3人はチンピラ風の男に絡まれてる。この男も狂暴な鬼人のメンバーなんだろうけど……話通じそうにねえなぁ。
「ちょっとこいつが話あるらしいんだけど……マスターに会えないか?」
俺は背後に隠れている青年を指差しながらそう言った。
「うん?お前は……シルフィードじゃねえか。って事はお前まだシェリアを連れ出そうとしてんのか?お前も頑張るねぇ。いいぜ、ついて来いよ。」
思いの外あっさり案内してくれるみたいだ。
見かけによらずいい奴なのか?
それにしても…こいつシルフィードって言うんだな。そういえば名前聞いてなかった。
今まで名前も聞かず行動を共にしていた事を思い出しながら俺たちはチンピラ風男の案内の元、ギルドマスターが居るという部屋まで連れて行って貰った。
「マスター、失礼しますよ。」
男がそう言いながら扉を開けるとそこに居たのは金色の髪も逆立てた厳つい風貌の男性だ。年齢は20代後半といったところか。
マスターにしては随分若い。
「返事待ってから開けろっていつも言ってるだろ。……ん?シルフィードじゃねえか。また来たのかよ。それにそいつらなんだ?」
「すみません。シルフィードの奴はいつもの要件っすよ。こいつらは連れです。」
「ああ…そういうことね。それにしても連れか…。」
鋭い眼光で俺たちを睨み付ける。
その視線だけで目の前にいるこの男が今の自分たちより格上の存在だという事を理解させられた。
「はじめまして。ギルド『銀狼の牙』所属、前山進と申します。こっちは金川美玖です。」
美玖ちゃんが俺に合わせて頭を下げる。
「へえ、お前らが叡山が言ってた銀狼の牙か。俺はこのギルドのマスターをやってる
俺は差し出された手を握り返す。
太く分厚い掌だ。
一体どれほどの鍛錬を積めばこんな手になるのか……
「ところでシル。お前らの用ってシェリアの事だよな。毎回言ってるがうちとしちゃ引き取って貰って一向に構わないんだ。説得は出来たのか。」
「いや…それが……その……」
ギルドマスターである鎧武は妹を連れ出して貰って構わないと言っている。
一体どういう事だ?
俺は恐る恐る2人の会話に入る事にした。
「あの〜、こいつって追放されたんですよね?」
シルフィードを指差しながらそう伝える。
「ああそうだよ。うちのギルドに居続ける為には毎月決められたクエストをこなさねえといけねえって決まりがあんだ。こいつはそれを3ヶ月間達成出来なかった。だから追放したんだ。契約書にも書いてあるぞ。」
渡された紙には確かにそう書いてあった。
別に珍しい話じゃない。
大手ギルドは入団者が後を経たない。
ギルドに入る為にはそれなりの条件が課せられるのは当たり前の事だし長くい続ける為に条件を提示されている場所だって普通にある。
「じゃあその妹の説得ってのは…」
「こいつの妹…シェリアの奴は腕っぷしは立つんだがちょっと性格に難があって——っと噂をすれば……」
鎧武が話している最中、突如としてギルドマスター室の壁が土煙をあげ破壊された。
煙の中から出てきた少女がこちらを睨みつける。
「また性懲りも無く来たの?この弱虫兄貴が。」
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