第32話 討伐
やっぱり痛いなぁ。
これが美玖ちゃんの新しい力か。
こんな魔法をすぐに覚えるなんて彼女には才能があるんじゃないか?
光の呑まれながらも俺は手を伸ばす。
ダメージが更に蓄積されて行く。
いいぞ、これで威力は更に上がる。
「進さん、退がって下さい!私がこのまま押し切りますから。」
美玖ちゃんの声が聞こえる。
確かに彼女の言う通り、このまま魔法で押し切る事も可能だろう。
だけどそれじゃあ時間がかかり過ぎる。
その間、美玖ちゃんは無理して魔法を撃ち続けなければいけない。
俺たちはパーティだ。
彼女一人に無理させる訳にはいかない。
俺は彼女の閃光をその身に受けながら右手でユニコーンの体に触れた。
よし、準備は整った。
「美久ちゃん、魔法を解除して!」
俺の声を聞くと同時に閃光が止む。
「スキル発動『起死回生』」
掌から放たれた衝撃波はユニコーンを呑み込んだ。
大地が揺れる。
技を打った本人の俺でさえも弾き飛ばされる勢いだ。
流石のユニコーンもこれに耐え切れる筈もなく、全てが止んだ頃には跡形もなく消えていた。
「ふう…良かった。これで一件落着か…」
意識が遠のいて行く。
薄れて行く意識の中、最後に目にしたのは涙目で駆け寄って来る美玖ちゃんの姿だった。
こうして初めてのボス戦は幕を閉じる。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
1週間後
ギルド『銀狼の牙』には体中に包帯を巻いたミイラ男の様な見た目の人物がギルドメンバーと雑談を交わしていた。
「しっかしお前、その程度で済んでよかったなあ。」
このギルドのマスターである斗真が笑いながらミイラ男に話しかける。
「笑い事じゃねえっての。全治1ヶ月だぞ。当分の間冒険者としての活動は出来ないし…はぁ…折角最近はいい調子だったのになぁ。」
このミイラ男の正体は前山進。
ユニコーン戦の後、病院に運ばれた進は全治1ヶ月と診断された。
ユニコーンによるダメージも大きかったが一番酷かったのは右手だ。
美玖の魔法を受け続け、起死回生の反動を受けた右手は暫くの間動かせない程のダメージを受けていた。
「こんな時、回復魔法を使える仲間がいたらなぁ。」
「協会に行って治療して貰えば良いじゃねえか。」
「馬鹿いうな。あんな高額なの俺が払える訳ねえだろ。」
回復魔法とはその名の通り、怪我や病気などを治す魔法だ。
回復魔法を使える冒険者は稀少であり重宝されている為、基本的にダンジョンには出る事はなく協会と呼ばれる組織に属している。
治療の内容にもよるが、最低でも5万円からと非常に高額でそう簡単に手が出せるものではない。
「そういえば雨太はあの後どうなったんだ?」
「ああそっか。お前、あの後気を失ってたもんな。あの子なら自分のギルドに帰ってったぜ。助けてくれてありがとうってよ。そういえばなんかあったら手を貸すって言ってたなぁ。」
そうか…無事なら良かった。
確か雨太は叡山のギルドだったな。
あのギルドとは何かと縁がある。
その内、また会えるだろ。
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