第29話 魔力切れ
「晴太!!!」
空中から落ちてくる晴太をなんとか受け止める。
「おい、晴太。大丈夫か?」
「痛ててて……やっちゃったなぁ。ごめん、魔力切れ起こしちゃったみたい。体動かないや。」
魔力切れ
魔法を使う際に利用される魔力。
自身が持つ魔力が無くなってしまうと暫くの間体が動かせなくなる為、冒険者にとって魔力切れは命取りになる。
だが、晴太は戦い慣れている様に見えた。
魔法を使う冒険者が自身の魔力管理すら出来てないなんて事があるか?
考えている事が顔に出ていたのか晴太がバツの悪そうな顔で話し出した。
「俺、そういう細かいの考えるの苦手で……でも大丈夫!雨太に代われば動けるから!」
「おい、待て!こんな所で雨太と変わったら……」
俺の静止の声も聞かず、晴太は二重人格を発動した。
「ど…どうも。お久しぶり?です。」
そこに居たのは雨太だった。
「雨太、状況はわかってるか?」
「はい。まあある程度は……でも、僕戦えませんよ。」
そんな事はわかってる。
だからこんな所で雨太と入れ替わって欲しくなかったんだ。
ユニコーンは上空から俺たちを睨み付けている。あいつからしてみれば雨太も晴太も同じ人物。ユニコーンのターゲットは雨太だ。
雨太が戦えない以上、俺がユニコーンとやるしか無い。
「なあ、また晴太と入れ替われないか?」
「それは出来ますけどまた動けなくなりますよ?それでもいいなら代わりますけど…」
「同じ体なのにか?」
「二重人格の効果で僕と晴太の魔力は2つに分かれてるんです。だから晴太が魔力切れで動けなくなっても僕はもう片方の魔力が使えるので動けます。」
なるほどな。
二重人格は魔力管理が苦手な晴太の魔力を強制的に管理する為のスキルみたいなもんか。
晴太1人だと魔力切れを起こしてしまうからその解決策としてもう一つの人格である雨太がいる。
雨太の役割は晴太の魔力が回復するまでの間逃げ切る事。
魔力を使ない事が前提だから雨太は戦いが苦手な性格になってるって訳か。
雨太が魔力を使うのは本当に身の危険を感じた時だけみたいだな。
この場に雨太を置いて逃げればこいつは否応なしに戦わないといけない。
そうなった場合、雨太は残りの魔力を使って戦うだろうし晴太の強さを考えれば雨太の状態でも勝てる可能性は高い。
だけどそれはあくまでも可能性の話。
もし雨太が戦わなかったら?
俺が逃げた後にユニコーンに一方的に虐殺される可能性だってある。
「流石にこんな子供を見捨てるなんて出来ないよなぁ…」
今の俺に勝てる相手じゃない事はわかってる。だけど、やるしかない。
俺は剣を手に取りユニコーンに視線を向けた。
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