第25話 雨太と晴太

 ダンジョン8階層


 自己紹介をした後、話の流れで2人は一時的にパーティを組む事になった。

 雨太の魔法の力を見ていた進は彼の実力は相当上だと見込み、初の8階層に挑戦していたのだが——




 知性を持ち、体には鎧を纏い剣を手にしたゴブリン、その名もジェネラルゴブリンと進が戦っている。

 ジェネラルゴブリンの背後には20体程のゴブリンが控えていて、タイミングを測っている。


 ジェネラルゴブリンは通常のゴブリンに指示を出すことが出来る。

 統率の取れていない雑魚ゴブリンを相手取るだけなら大した苦労はないが指示を受けたゴブリンともなれば話は別。

 思い通りに動けない状況に俺は苦戦を強いられていた。


 こんな時、魔法があれば——


 自然と目線は雨太の居る方を追ってしまう。


 その雨太は何をしているのかといえば隅っこの岩場の影でガタガタと震えている。

 彼はジェネラルゴブリンを見た瞬間、奇声を発しながらすぐに身を潜めた。

 あんな魔法を持ってるからてっきり強いと思っていたが、とんだ期待外れだ。


 別のギルドだし会って間もないから強く言うのを躊躇っていたが、そんな悠長な事も言ってられない。

 俺だって命がかかってるんだ。

 力を持っているなら使って貰わなきゃ困る。


「おい、雨太!さっきの魔法を使ってくれ!お前ならこのゴブリン達なんとか出来るだろ。」


「む…無理ですよ。モンスターと戦うなんて…」


 こいつ…どうやってここまで生きて来たんだ?冒険者がモンスターと戦えないなんて話あってたまるか。

 この数を俺一人でやるしかないのか…


 現状、俺が持ち合わせているスキルでこの状況を打破出来るものはない。

 こういう時、魔法を使える仲間がいたら…


 その時だった。


「うわあぁぁぁぁぁぁあ!!!」


 背後から叫び声が聞こえる。

 叫び声の正体は雨太だった。

 雨太の周りには3体のゴブリンがいる。


 ——しまった。

 いつの間にあそこまで接近してたんだ。


 俺もジェネラルゴブリンの相手をしている。雨太を助けに行こうにもなかなかその隙を作り出せない。

 そうしている間にもゴブリンは雨太へと一歩ずつ近付いて行く。


「く…来るな!助けて……助けて、!!」


 その瞬間、雨太の体から炎が溢れ出る。

 炎は雨太を中心にもの凄い勢いで広がり、3体のゴブリンを最も容易く燃やし尽くした。


「こんな雑魚相手にビビるなんて…全く仕方ない奴だな、雨太は。」


 姿形は雨太となに一つ変わらない。

 だがそこには明らかに雨太とは違う雰囲気を纏った少年が立っていた。


 あの子は一体……

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