第22話 魔導書
「……なんですか…これ?」
翌日、ギルドに着いた俺は忘れない内に叡山から貰った光の魔導書を美玖ちゃんに渡していた。
「昨日、叡山から貰ったんだ。美玖ちゃんに渡して欲しいって。」
「そ…そうなんですか。ありがとうございます…?」
お礼を言おうとしたが、俺に言うのもおかしいと思ったのか語尾が疑問形になってしまっている。
まあ確かにこの魔導書をくれたのは叡山だし礼なら彼に言うべきだろう。
「俺も見せて貰っていいかな?ちょっとだけ中身気になるし。」
「どうぞどうぞ。先に読んで大丈夫ですよ。」
「いいよ。一緒に見ればいいし。俺はどんな内容が書いてあるのか気になるだけだからさ。」
魔導書なんて生まれてこの方、初めて見たから昨日から中身が気になって仕方がなかった。
だけど流石に他人への贈り物を勝手に見るのは気が引けたので今まで見なかったのだが彼女の許可が貰えるのであれば是非とも見てみたい。
2人で一緒に魔導書を読み始める。
だがしかし——
「なんだこれ?全然読めねえ。」
俺には肝心の中身が読めなかった。
そこに文字が書いてあるのはわかる。
だけどどれも見た事がない言語だ。
「はぁぁぁぁ。文字から勉強しなきゃいけないなんて……叡山の奴め。そりゃ手放す訳だ。」
どこの国かもわからない言語を覚えるなんて時間がかかりすぎる。誰も魔導書を読もうとしない理由がわかったと1人で納得する。
不良品を渡しやがって…後で返しに行ってやる。
そんな時、背後から声が聞こえた。
「へぇ、それ魔導書じゃねえか。珍しいな、どっから持って来た。」
いつの間にか斗真が俺たちの間から覗き込むように魔導書を見ている。
「なんだ、居たのか。」
「俺のギルドだ。居て何が悪い。
んな事より、お前ら魔導書なんてどこで買って来た?どっちか読めんのか?」
「買ってきてねえ。貰い物だ。読めないから返してこようかと思ってたところだ。」
しかし、そんな進の横で気まずそうに美玖が手を上げる。
「あの……私、読めます。」
驚いた。
こんな都合のいい事があるなんて。
まさか偶然にも美玖ちゃんがこの魔導書に書かれてる文字を読めるなんて思いもしなかった。
「美玖ちゃん読めたんだ!凄いね、どこで習ったの?」
「習ったっていうか……その…普通に日本語に見えるんですけど…」
何を言ってるんだこの子は?
まさか、俺が読み書き出来ない人間だとでも思ってるのか⁉︎
嘘だろ……美玖ちゃんはそんな人を馬鹿にする様な子じゃないと思ってたのに…
「ばーか。魔導書ってのは適性を持った奴にしか読めねえように作られてんだよ。見たところ光系統の魔導書だろ。お前に光の適性がないだけってこった。」
俺が何を考えていたか見透かした様にそう言い放つ斗真。
言い方は腹立つけど美玖ちゃんが俺の事を馬鹿にした訳じゃなくてよかった。
斗真の説明から考えて、美玖ちゃんにはこれが普通の本に見えてただけって事だな。
ん?待てよ。俺は斗真にこれが光の魔導書だなんて教えてない筈だが……あいつ、なんでわかったんだ?
「なあ、お前なんでこれが光の魔導書だってわかった?」
「んなもん俺が読めるからに決まってんだろうが。このギルドで読めねえのはテメエだけってこった。まあなんだ……どんまい。」
笑顔で俺の肩に手を置く斗真。
その顔が無性に腹が立つ。
この魔導書を取ってきたのは俺なのに……
2人が魔導書を読む後ろ姿を、俺はただ見ている事しか出来なかった。
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