第17話 対応策
あいつ……頭に血が上りすぎだ。
これが決闘だってのを忘れてるな。
あのスキル、どう見ても人に向けて出す技じゃないぞ。
炎・水・雷の三属性の魔法が一つに重なり合っている。
俺は魔法を使えないがそれでもわかる。
アレをまともに食らったらやばい。
観覧席にいる叡山を見るが止める様子もない。
あれくらい自分で対処しろって訳か。
あいつは俺のスキル1回見てるから避けれると思うよな。
『神出奇没』
なかなか便利で俺も多様しているスキルだが、忘れてはいけないのはどこにでもワープ出来る訳ではないという事だ。
使うには必ずマーキングが必要になる。
こんな何の下準備も出来ない敵地で使えるものではない。
まあ、対応策くらいは用意してあるが…
腰に着けているポーチから4本の投げナイフを取り出すと、それらを無作為に投げつける。
「はっ!バカが!どこ狙ってやがる。びびって手が震えちまったか!」
ナイフを外した事により隆二は人を馬鹿にした様に高笑いする。
俺は奴の挑発にあえて何も応えない。
無駄に何か喋っても相手に情報を与えてしまうだけ。
対人戦において情報は生命線となる。
みすみす敵に情報を与えてやる必要はない。
せいぜい今のうちに笑っておくといいさ。
既に準備は整っている。
高笑いを続けていた隆二だが、俺が何も反応しないと分かるや否や、苛立ちを露わにしてきた。
「まったく、ナメた野郎だぜ…。俺をコケにしやがったな。降参すれば見逃してやろうと思ってたが止めだ。テメエは殺す。」
炎・水・雷の三属性が一つに混ざり合う。
それらは大きな球体へと変化した。
「こいつは俺の最強魔法だ。触れたものを塵すら残さず消し飛ばす威力を持っている。こいつで——終わりだ!!!」
——速い!!
その球体は驚くべき速さで飛んで来た。
時速にして約200km。
不意を突かれた状態で避け切れるものではない。
敵が俺ではなければだが。
大きな爆発が起きる。
地面は抉られ、進が立っていた場所は消し飛ばされていた。
「はっ!見たか!この威力……どうだぁ!これで俺を手放せなくなっただろ!」
観覧席にいる叡山を見上げる隆二。
しかしそこに居た叡山は隆二の事など見ていない。
その瞬間、怒りが込み上げる。
「気に食わねぇ…俺の事なんざ眼中にねえってのか…クソが!!ぜってぇ見返してやる。おい!決闘は終わりだ!」
アナウンス係の受付嬢にそう言うと隆二は闘技場を後にしようとした。
しかしその時、会場内に叡山の声が響き渡る。
「何処へ行く?まだ決闘は終わっていない。君の降参…という事でいいのかい?」
「はぁ!?何言ってんだ。あいつは死んだ。俺の三位一体を食らってなぁ。俺は悪くねえぜ。弱過ぎるあいつが悪いんだからよぉ。」
「君は少々視野が狭過ぎるみたいだな。やはり、私のギルドに相応しくない。よく周りを見渡すといい。」
叡山に促され渋々といった様子で周囲を見渡す。
「は?なんでお前が…」
進が立っていた。
その体には傷一つついていない。
「あいつまた余計な事を……そのまま出て行かせりゃ俺の勝ちだったろうが。」
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