第9話 起死回生
振りかぶった斧から放たれる一撃は岩をも砕くパワーを持つ。
ランクアップしたばかりの冒険者を最初に待ち受ける試練がこいつだ。
ランクアップしたばかりで浮かれてる冒険者を圧倒的なパワーで捻り潰す。
それがこのオークという化け物。
今の俺はランク2のレベル1という非常にいい状態だ。
もし後1レベルでも上がってたら三進二退が発動してレベルが9に下がってた。
今の俺のベストコンディション。
果たしてどれほど通じるだろうか…
まずは様子見。
奴が一番苦手そうなスピード勝負といこう。
間合いを保ちながらオークの周囲を走り回る。
その見た目通りというべきか、案の定オークはスピード勝負が苦手なようで俺の動きに追いついていない。
敵の懐に入り過ぎないギリギリの距離から攻める。
薄皮一枚を斬り裂く程度だがダメージは確実に与えてるはずだ。
懐に入りすぎれば一発でこの戦況を逆転させられるかもしれない。
それ程の力を奴は持っている。
大丈夫だ。
守りは硬いが刃は通ってる。
このまま攻め続ければ勝てる。
そう思っていた。
あれからどれほど時間が経っただろう。
オークの体は俺の斬撃でボロボロだ。
流石に俺も疲れが回って来ているがそれは向こうも同じ。
後少し…後少しでオークを倒せる。
その時は訪れた。
剣を振り抜いた途端、何かが砕ける音が鳴り響く。
剣が——軽い。
刀身がない。
俺の脚より先に剣が寿命を迎えてしまった。
うそ……だろ。
何でこのタイミングで…
この時、一瞬だけオークから視線を離してしまった。
それが間違いだった。
激しい衝撃と共に体が宙に舞う。
気がつくと俺は地面に倒れ込んでいた。
体中が痛い。
節々に痛みが走り右手は動かない。
骨が折れてしまっている。
ゆっくりとオークが歩み寄って来る。
やばいな。
このままだと死ぬ。
くそっ、動けよ。俺の体。
辛うじて立ち上がるがオークはすぐ目の前にいる。
剣を失い、右手も動かない。
こんな状況で俺にできる事はあるのか。
賭けだがアレを使うしかない。
オークの動きは鈍い。
今の俺でも辛うじて対応は出来る。
大振りの攻撃を繰り返すオーク。
大丈夫だ。
奴の攻撃は見えている。
まだだ……後少し…奴の体に触れさえすれば…
オークの攻撃をギリギリで躱し続け一歩ずつ前に進んで行く。
一歩一歩確実に前に進む。
そしてとうとうオークの懐に入り込んだ。
左手がオークの体に触れる。
「スキル発動『起死回生』」
その声と同時に俺の掌から凄まじい衝撃波が放たれた。
スキル『起死回生』
戦闘で受けたダメージを倍にして返す能力。ただし重症を負っていない限り発動する事は出来ない一発逆転のスキル。
この重症ってのがどのくらいのダメージかわからなかったが、上手くスキルが発動してくれてよかった。
オークの体が砕け散る。
この戦い、俺の勝ちだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます