第4話 四面楚歌
俺たちは今、ダンジョンの1階層に2人で潜っている。
あの後、俺たちの間に流れる居た堪れない空気を察したのか斗真が2人でダンジョンに潜ってみてはどうかという提案をしてくれた。
2人きりになるのは正直嫌だったが、別に彼女が悪い訳でもないし後々の事を考えると早めにお互いの能力はわかっていた方がいい。
「美玖ちゃんはどんなスキルを持ってるの?」
2人以上でダンジョンに潜る時はお互いの戦い方をある程度知っておいた方がいい。
何も知らない奴同士が手を組んでも邪魔になるだけで何のメリットにもならない。
ぱっと見、彼女は武器を持っていない。
ずっと持ってるバッグが少し怪しいがあの中に入る武器といえば短剣くらいだ。
俺も剣を使うし、お互いに近距離だと少しやりづらいな。
「えっと…私の固有スキルは『四面楚歌』って言って…その…能力はちょっと説明が難しくて……」
辿々しくはあるがスキルの説明をしてくれた。
どうやら四面楚歌とは幻術系のスキルで歌や音によって敵を幻覚に嵌める能力だそうだ。
四方八方から攻撃される幻覚を見せるらしく、今までこのスキルで倒せなかった敵はいないらしい。
ただしデメリットもあって幻覚にかけるまで3分程歌ったり、奏で続ける必要がある事。
敵の強さによってこの時間は伸びたりする。
その間彼女は無防備の為、一人では何も出来ないらしい。
無差別攻撃ではないので仲間に幻覚がかかる心配はないらしいが、3分もあるなら直接倒した方が早く、彼女を護り続ける事に嫌気がさした仲間たちから嫌がらせを受け、彼女は前のギルドを抜けたそうだ。
確かに雑魚相手なら必要ないかもだけど強敵相手に使う一発逆転の手段としては優秀だ。
彼女のスキルは下層ほど力を発揮する。
そんな気がした。
「一応、最低限戦えるように訓練はしてて……その…短剣なら使えるんですけど…」
そう言いながらバッグから短剣を取り出した。
短剣か…さっきのスキルを聞いた後だと、この武器は合ってない気がする。
固有スキル的にも彼女は遠距離から攻撃する手段を持った方がいい。
弓か銃…その辺りの武器が妥当だと思うがどう説明したものか…
俺の方がレベルは下だし、そんな奴が口出しするのもなんか違う気がする。
ここは俺が彼女に合わせた方がいいか。
「そっか。じゃあ俺が後衛に回るからちょっと2人でスライムでも倒してみよっか。」
俺はバッグの中から弓矢を取り出す。
長年冒険者をやってるお陰か、俺は様々な武器を一通り使いこなせる。
その上で剣を使っていたのはコスパがいいから。
弓や銃は金がかかる。
いちいち矢や弾を補充するのは大変だ。
美玖ちゃんが短剣を抜き、俺はその後ろで弓を構える。
さあ、狩りの始まりだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
金川美玖
年齢 19歳
所属ギルド 【銀狼の牙】
固有スキル 『四面楚歌』『???』
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