第3話 気まずい

「俺は前山進、よろしくね。」


 お互いに挨拶を済ませたところで俺にはどうしても彼女に聞きたい事がある。

 それは——


「ところでなんでこのギルド選んだの?ほら、このギルドアレだし……」


 なんでこのギルドを選んだのか。

 自分で言うのもなんだが、このギルドにはなんの魅力もない。

 ギルドマスターは怠け者だし団員は俺だけ。

 その唯一の団員である俺もランク1の下級冒険者。

 彼女がこのギルドを選ぶ理由がわからない。


「えっと…その……私、元々は別のギルドに居たんです。だけど…そのギルドと合わなくて……困ってたら斗真さんに誘って貰って…」


 なるほどね。

 ギルドを抜けたタイミングでたまたま斗真の奴が声をかけたって訳か。

 この数分でわかったけど、この子は結構人見知りだ。

 自分から他人に声をかけるなんて行為は彼女にとって難しい事なんだろう。

 半ば無理矢理連れて来られたんだろうな。

 あいつはそういう奴だ。

 仕方ない、助けてやるか。


 俺は出来る限り優しげな表情で語りかけた。


「このギルドが嫌だったらそう言って大丈夫だよ。気にしなくていいから。俺だってチャンスがあればこんなギルド抜けてやるって思ってるし。」


「おい!テメエ、ふざけんなよ。」


 彼女に話しかけたんだが、なぜか斗真が間髪入れず口を挟んできた。


 こんなの無視だ、無視。

 斗真なんて気にする必要はない。

 今はただ未来ある若者を守ることに集中しなければ。


「だ…大丈夫…です。皆さん、優しそうなので…」


 声は震えているが無理してる訳でもなさそうだ。


 そうか。

 彼女が自分で決めたのなら俺が口を挟む事じゃないな。


「そっか。それなら改めてよろしくね。」


 俺が手を差し出すと少しぎこちない様子ではあったが、美玖ちゃんは手を握ってくれた。


「ところで別のギルドに居たって事は初心者じゃないんでしょ?レベルはどのくらいなの?」


 ギルドを変えたからといってレベルやランクが変わる訳じゃない。

 これから一緒のギルドで働く訳だし、お互いのステータスくらい知っていた方がいいかも知れない。


 そう思い俺は彼女にステータスを尋ねる。


「ランク2でレベルは1です。その……低くてすみません。私、1年前に冒険者になってランク2に上がったばかりなので……その…お役に立てるかどうか…」


 なに…俺より上…だと…

 てっきり俺より下だと思ってたのに。

 そんな……


「あ…あの…」


「放っといていいぞ。そいつお前よりレベル低いから落ち込んでるだけだ。歳下にレベル抜かれるなんざいつもの事だろうに……」


 落ち込む俺に戸惑う美玖ちゃん。

 それに対して斗真の野郎はどうでもいいと言わんばかりの態度だ。


 確かに斗真の言う通りだけど改めて言われると腹が立つ。


 はぁ…落ち込んでても仕方ない。

 このままじゃ美玖ちゃんを困らせるだけだ。


 俺は起き上がり精一杯の作り笑いを浮かべる。


「ランク1でレベルは9。まあ、色々事情があってこのレベルなんだ。」


 

「あ…そうだったんですね。その……すみません。」


 2人の間に気まずい空気が流れる。

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