俺の休業

『誠に勝手ながら、しばらくの間、臨時休業させて頂きます』





















 チラットさんが、消えた。

 正確には、俺を“かばって”消失した。


 ここ最近の食細りが気になって無理やりチラットさんの体を見たら、なんと左半身がのだ。

 店の屋根裏から出てきた数々の黒色のアメ玉。

 チラットさんは、密かに毒性が強いアメ玉を食べていたらしい。


 おそらく、俺のために。


 俺が健康体になったのは、旨いブツを食べるようになっただけじゃない。

 だ。

 チラットさんが食べた毒は体を蝕み、少しずつ部位を消し去っていったのだろう。

 チラットさんが、いつも壁際から右半身しか体を見せなかった理由。

 それは恥ずかしがり屋だったわけじゃない。

 体半分が消えていることを、俺に隠したかったからだ。


 そんな事態にようやく気づいた俺だったが、時既に遅し。

『…………ニッ』という消え入る鳴き声を上げたかと思うと、スッと俺の手元から消えてしまった。


 うそ、だろ。


 何で、どうして。

 俺は別に毒を食べても『除想』できるのに。

 そのことだって、チラットさんは見ていたはずなのに。


 何で、どうして。

 チラットさん……………………




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