俺の客
まあそんなわけで、俺の店での買い取りは年々下降気味なのだが、そんな中でも定期的にやって来る常連さんもチラホラいる。
ちなみに、俺の店に売りに来る客層は老若男女、多種多様な人物が訪れる。
年齢制限は設けてない。どなたでもウェルカム。別に、人間以外の生物でもオーケイだ。
ただし、基本的には俺の店に直接売りに来ることを条件としている。
出張買取は稀のまれ。
買い取り希望の客は、店内にある『空想測定器』を使って買い取り基準の糖度と密度、そして純度を図るのだが、何せこれがめちゃくちゃデカい。
何で、こんなにデカいんだ。持ち運ぶのにも一苦労だぜ。
まあ、俺が開発したやつなんだけどな。
という
買い取りを希望する客の大半は、当然ながら金目当て。
こちらとしても、価値ある空想と判定できた
ただし、空想を売る時は『本名を名乗ること』が絶対条件だ。
これは、その売り込んできた空想が本当に本人が考えたものか確認するため、いわゆる盗作、『盗想(とうそう)』防止のためだ。
本名を名乗らない奴は門前払いだし、もし偽名を使った場合、『空想測定器』でエラーが出るため買い取り不可になる。
だから、俺の店へ来た時は必ず本名を名乗ってくれよな。
そんな俺の店にやってくる客の中に、まれにいるのが自分の空想を“捨て去る“ために売りに来る者たちだ。
飽きたから。
失恋したから。
永遠にいなくなってしまったから。
理由はそれぞれあれど、空想を売ることで未練を断ち切ったり、頭の中に締めていた重りを外して楽になったりしたいという考えは共通している。
俺の店で空想を売った場合、それは二度と思い出すことはできなくなる。
完全消去。返品不可。
なので、売買契約の際にはこの点を特に強調して説明するようにしている。
あとでトラブルになっても困るんでね。
ちなみに、先刻の客の
で、その大事な
売りに来た際は、いかに自分がそのアイドルを売れない頃から支え続けてきたかといったよもやま話を、2時間近く喋りまくられ、挙げ句、消去したいと言いながらも自分の大事な
マジ、疲れた……。
で、それはありきたりな
この街で商いをしているからには、一応、“善良な市民”として警察案件には協力する必要がある。
『危険物』の買い取り、つまり、重大な他害行為や執拗な行為に発展する可能性があるといった、『過激な空想を積極的に買い取る活動』がその一環だ。
こういった案件はこの上なく面倒くさいのだが、協力金も支給されるということで仕方無しに協力しているって感じだ。
まあ、俺としては金なんざどうでもいいんだが。
大事なのは中身。空想の『質』。
なんたって、これが俺の生命線になるからな。
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