その8 開戦

 攫われたマイナたちを助けるべく

"終末教"の本拠地の乗り込んだレナードたち。


 ダンジョンのモンスターに苦戦をしながらも、

奇妙な扉の前に辿り着いていた。



「この扉・・・、確かこの先に

大きな広間があったはずよ。」


「広間・・・、そこには何があるんですか?」


「一回だけ来た時に中を見たけど、

その時は大型モンスターが鎮座してたから急いで引き返したわ。」


「しかし今回はモンスターもいないんじゃないかい?

あの装置が働いてるとすればの話だけど。」


「どっちにしろここが奴らの根城のはずだから

余計な脅威は排除してるでしょうね。

・・・開けるわよ。」



 一言忠告をすると、ルビーが大きな扉を慎重に開く。


 古びた扉がきしむ音を立てながら開かれると、

薄暗い広間が現れた。



「暗いね・・・。 これってもしかしなくても

どこかに敵が潜んでるんじゃないかい?」


「その可能性は高そうですけど、

入ってみないことにはみんなを探しようが・・・、

・・・えっ? あの、奥にいるのはもしかして・・・?」


「・・・!? ユカ、ミカ、チカ・・・!

みんな・・・!」



 レナードたちが大広間の中を覗いてみると、

大きな檻がぼんやりと見える。


 そして中に捕まった三姉妹やマイナがいるのを見た瞬間、

ルビーがすぐさま駆け出していた。


 道中もずっと冷静さを保っていたルビーだったが、

彼女たちを見た瞬間に何もかもが吹き飛んでしまったらしい。



「あっ!? ルビーさん!?」


「ど、どう見ても罠だろう!?

いや、どっちにしてもそんなこと言ってる場合じゃないか・・・。

私たちも腹をくくるしかないよ!」


「その通りです・・・! マイナさん、みんなっ!」



 ルビーに続いてレナードが駆け出し、

その後ろをドロシーが必死でついて行く。


 檻に捕まっていた4人がレナードたちに呼びかけるものの、

もはや誰も止まらず、止められなかった。



「みんな、駄目・・・! 罠よ・・・!」


「姉さん、気を付けて! やつらが待ち構えてるわ!」


「ユカ、ミカ、チカ、よく頑張ったわね!

私たちが来たからには安心なさい!

それで? この子たちをさらったのはどこのどいつよ、姿を見せたらどうなの!」



 ルビーが啖呵を切ったあたりでレナードも到着し、

捕らえられている人たちを確認する。


 四人とも無事ではあったものの、

檻には頑丈そうな鍵がかけられており

一筋縄では救出できそうになかった。


 そしてドロシーが追い付いたあたりで

入って来た扉が閉められ、

部屋の奥から声が聞こえてくる。


 玉座のような椅子に座りながら、

ローブの男が、ズィアークが語り掛けていた。



「"終末教"の本部へようこそ。

見たところ彼女たちの知り合いの皆様かのう?」


「・・・あんたが親玉なの?

よくもこの子たちを危ない目に合わせてくれたわね!」


「親玉、という言い方は不適切じゃな。

我らは同じ志の元に集まった同胞であり、優劣があるわけではない。

しかし強いて言うならば・・・、指導者とでも言うべきか?」


「そんなことはどうでもいいわよ・・・!

さっさとこの子たちを解放しなさい!

無理だと言っても力ずくで言うこと聞かせてあげるわ!」


「やれやれ、せっかちな供物じゃのう・・・。

まあよいわ。 この元気の良さはきっと魔王様も気に入ってくださる。

しかもこやつと、もう一人巨乳の女がいるとは報告通りじゃな。」



 ズィアークはゆっくりと立ち上がると、

大きく手を開きながら部屋中に響き渡る声で叫ぶように言い放つ。



「我が名はズィアーク! ここに魔王様復活のための生贄と、

復活した魔王様への供物が現れた!

皆の者よ、供物を生かして捕らえるのじゃ!」


「「「承知しましたっ!」」」



 ズィアークの呼びかけに応じて

暗闇の中から複数の人間が現れる。


 その数は、マイナや三姉妹を捕えた者たちが数名に加え

さらにそれと同じ数の人員がいた。


 レナードたちは、10人近くのローブの集団に囲まれてしまう。


 さらに、奥にはズィアークと

それを守るように二人の人間もいる。



「・・・やはり罠だったか。

さてどうする? 私は魔法を使えてもあと一回か二回までだ。」


「・・・問題ないわ。 こんな奴らは物の数じゃない。

でも相手をする意味もない。 だからレナードとドロシーは

あのいかれたジジイを狙ってちょうだい。 鍵とか持ってたら奪ってくれる?」


「あの人は問題ないと思いますが、

横にいる二人、少なくとも片方は一筋縄じゃいかないかもしれません。」


「それでも頼むわ。 とにかくあのジジイさえ押さえれば

こいつらもそれ以上は抵抗できないはずよ。」


「よし、じゃあまずはあの爺さんのところへ行けるよう

道を開けるところから頼むよ。」



 "終末教"とレナードたちの戦いの火蓋がいま切られた・・・!


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る