その7 準備

 攫われたマイナたちを助けるべく

"終末教"の本拠地があるダンジョンへ入っていったレナードたち。


 既に数時間ほどは過ぎていたが

かなりの頻度でモンスターに襲われるため

なかなか進むことができなかった。



「ふぅ・・・。 今度もなんとか片付いたわね・・・。

みんな大丈夫?」


「は、はい・・・。 なんとか・・・。

いてて・・・。 油断してるつもりはないんですけど

どうしても間近に来るまで襲撃に気付けません・・・。」


「無理ないわよ。 ダンジョンのモンスターは

特に暗闇から襲うのに長けてるもん。

かといって下手に明かりを点けたら奴らを刺激してしまうわ。」


「本能が強くなって動きが活発になる、でしたっけ。

この壁の心細い明かりだけで戦うのはしんどいけど

仕方ありませんね。」



 大きな傷は負っていないものの、

ルビーとレナードはあちこちが傷つけられてしまっている。


 そしてドロシーはというと、傷こそ負っていないものの

相当に疲労が溜まっていた。 



「はぁ・・・、はぁ・・・。 よ、よし、早く先へ行こうか・・・。」


「・・・無理にしゃべらなくていいわ。

移動と連戦で疲れてるんでしょ。」


「どこか休憩できる場所があるといいんですけど・・・、

立ち止まるとモンスターに襲われてしまうから

先へ進まざるをえません・・・。」


「き、気にしないでくれ・・・。 まだ歩けるから・・・。」


「・・・かなり進んできたからそろそろ開けた場所へたどり着けるはずよ。

二人とも、あと少しだけ頼むわ。」



 励ましの言葉をかけつつ、ルビーが歩みを進める。


 それに続いてドロシーが重たい足を動かし、

レナードが後ろを守りながら歩いて行った。



「・・・モンスターの襲撃がおさまってきたわね。

きっと奴らの本拠地が近いんだわ。

もうすぐあの子たちを助けてあげられる・・・!」


「例の装置でモンスターが近付けないんでしょうか・・・。

なんにせよ助かりましたね。

みんな、どうか無事でいてください・・・。」


「わ、私はもうあまり戦力になれないだろう・・・。

もし戦いになったら、その時は頼んだよ・・・。」



 敵の拠点が近いことを感じ取り、

それぞれ気を引き締めるレナードたち。


 一方その頃、"終末教"のある部屋では

ローブを着た男たちと、アイヴィスという女が話をしていた。



「・・・と、言うわけで、申し訳ないんだけど

生贄たちの牢屋を玉座の前へ移動させてもらえるかしら。

ズィアーク様は侵入者が目の前で力尽きるのをお望みなの。」


「は、はい、分かりました。

では仲間に声をかけておきます。」


「急いでね。 侵入者はもうすぐ来るはずだから今すぐにお願い。

じゃあ頼んだわよ。」



 アイヴィスはそれだけ言うと、踵を返して部屋を出ていく。


 命令を受けたローブの男たちは、フードを被り直して歩き出した。



「急ぐか。 アイヴィス様がああ仰られるということは

本当に侵入者が来たらしいな。」


「毎度のことながらあの人はそういうのが良く分かるもんだ。

ズィアーク様も相当な信頼を置いてらっしゃる。」


「俺も・・・、あの人に助け船を出してもらわなきゃ

今ごろ処刑されちまってただろうからな、

感謝してもしきれねえや。」


「お前気を付けろよ・・・。 でかい声じゃ言えねえが、

ズィアーク様は少しでも気に入らないことがあると

すぐに機嫌が悪くなるんだ。」


「肝に銘じておくぜ・・・。

あんな恐怖は二度とごめんだ。」


「アイヴィス様が側近になられてから

ズィアーク様の癇癪は相当に減ったらしいからな。

今までがどうだったのか想像もしたくねえ。」


「まったくだな。 よし着いた、早いところ仲間に声をかけて

生贄たちを運んでおこう。

万が一にもズィアーク様のご機嫌を損ねたくねえからな。」



 そう言うと、ローブの男たちは部屋に入って

他の人間を招集する。


 果たしてレナードたちは無事にみんなを救出することができるのか。

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