その3 ダンジョンとは

 攫われたマイナや三姉妹を助けるべく、

レナードとルビー、そしてドロシーは準備を終えてすぐに出発した。


 ドロシーの祝福を使って暴いた情報をもとに、

ルビーがかつて攻略していたダンジョンの入口を目指して

森の中を歩いている。



「それで・・・、確証があるんだよね?

その洞窟とやらが『ダンジョン』の入口だって。」


「確実に、とまでは言わないわ。

でも恐らく奴らはそこを本拠地にしてるはずよ。

それでいろいろ説明のつくことがあるの。」


「でも、ダンジョンって確かモンスターが

地上とは比べ物にならないほど多く、

しかも強いものが多いんですよね? そんなところにどうやって・・・。」


「そこに関しては憶測になるんだけど・・・、

ダンジョンの中にモンスターが入れなくなる場所を作れれば

拠点としては極めて強固なものになるわ。」


「それはそうだろうが、いったいどうやって

モンスターから隔離された空間を作るっていうんだい?」


「難しい話じゃないでしょう?

だって、人が暮らしてる町だってそういうものじゃない。」


「それは、モンスターを寄せ付けなくなる装置が・・・、

・・・あっ!?」


「そうよ。 もしその装置を手にいれるか、

あるいは同じような効力を持つものを作れるなら

私の言う条件は満たせるはずよ。」


「・・・なあ、まさかとは思うが、

いま私たちが拠点にしている町が滅んだのは・・・。」


「そこまでは分からないわよ、滅んだのってかなり昔の話だし・・・。

そのころからあの連中はいたみたいだけど・・・。

あ、ようやく森を抜けるわ。」



 光が漏れる木々の間を抜けると、

レナードたちは広い草原に出る。


 周囲には相変わらず森が見えるものの、

平坦な地形がかなり遠くまで広がっていた。



「ここもあんまり変わってないみたい。

道案内は問題なさそうよ。」


「ここからまだまだ北に進むんですよね。

ドロシーさんはまだ歩けますか?」


「問題ないよ、だけどもしも君たちに追いつけなくなったら

置いていってもらって構わないから・・・。」


「そういうわけにはいかないわ。

あの子たちを安全に助けるにはあんたたちの力を借りる必要があるもの。

先走っても悪い結果になる可能性が高いわ。」


「・・・ああ、そうだね。 よし、とにかく進もうか。」



 三人は歩みを揃えつつ、ダンジョンの入口を目指して歩き続ける。


 道中、ふと話が途中だったことを思い出し

レナードがルビーに問いかけた。



「そういえばルビーさん、ダンジョンを拠点にできたら

いろいろと説明が付くって言ってましたよね?

あれはどういうことなんですか?」


「そういえば話の途中だったわね。

まず第一に、居場所が見つかりにくく

見つかっても攻め込まれにくいってこと。」


「地下だし、モンスターの巣窟ですものね・・・。

でも、もしモンスターを寄せ付けない装置を使ってるとしたら

モンスターが全部逃げちゃうんじゃないでしょうか?」


「それに関しては、不思議なことにダンジョンのモンスターは

絶対に地上へ出ようとしないの。」


「本当ですか? ダンジョンのモンスターにはそんな習性が・・・。」


「そもそもモンスターって人間を襲う本能を持ってるはずなのに、

地下深くで人間が来るのをずっと待ってるって

それ自体がおかしいわよね?」


「確かに・・・。 じゃあ地上にいるのとは

根本的に違うのかもしれませんね。」


「あとはもう一つの理由だけど、

ダンジョンってなんだか地上と距離感がおかしいのよ。」


「おかしいって、どういうことですか?」


「ダンジョンの入口は突然現れるって言ったでしょう?

あれ、一つじゃなくて同じダンジョンにいくつもの入口があるのよ。」


「じゃあ、別の場所から入っても

同じダンジョンに辿り着くと・・・?」


「そう。 それも、入口同士が恐ろしく離れていてもね。

前にダンジョンで迷って出口を間違えたことがあるんだけど、

実際に移動した距離とはずっと離れた場所に出たから驚いたわ。」


「それってどのくらい離れてたんですか?」


「ダンジョンの中では半日ぐらいしか歩いてなかったのに、

最初に入った入口から10日はかかる距離のところまで移動していたのよ。」


「そ・・・、そんなことがありえるんですか・・・?」


「私の体験談だから間違いないわ。

ともかく、もしもあいつらがそれを熟知していたら、

この大陸を簡単に移動できてしまうってことよ。」


「ダンジョンの出入り口を使ってあらゆる場所で

巨乳の女性を探していたんでしょうか・・・。

とんでもない集団ですね。」



 ダンジョンやそこを本拠地にする集団について

憶測を立てつつ会話するレナードとルビー。


 相手は想像よりもはるかに手ごわいかもしれない、

果たして攫われたみんなを無事に助けることができるのだろうか。


 そんなことを考えていると、

後ろの方から声が聞こえてくる。



「ふ、二人とも~、ちょっとペースが速いよ、

置いてくわけにはいかないって言ったじゃないか~。」


「あれ、ドロシー? あっ、ごめんなさい。

話に夢中でペース上がってたことに気付かなかったわ。」


「ドロシーさんごめんなさい。

・・・少し休憩しましょうか。

急いだところで追いつけるとも思えませんし。」


「それがいいわ。 ドロシー、ちょっと休みましょー!

お水あるからここまできてちょうだーい!」



 自然と急ぎ足になりかけていた彼らの追跡は、

ドロシーによって未然に防がれたのかもしれない・・・。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る