その8 急転

 ルビーの匿っていた巨乳の三姉妹に

勉学や料理を教え始めてからおよそ3週間ほどが過ぎた。


 その間、レナードはルビーと共に狩りをしたり、

乾燥させた肉や皮などを町へ売りに行ったり、

ときどき戦いの稽古をつけてもらっている。


 今日もまた、無事に町での用事が終わり

ルビーと共に拠点へ戻っていた。



「今日もなんとかまとまったお金ができたわね。

食料の備蓄も切り崩してはいるけど、

ここまでちゃんと生活できるとは思ってなかったわ。」


「マイナさんのお陰ですね。

なんとかユカさんたちが町で雇ってもらえるようになるまで

この生活が続くといいんですが・・・。」


「その点に関しては大丈夫そうよ。

とりあえず町の食堂で下働きから始められるくらいには

料理やその他のことも覚えてくれてるらしいから。」


「もうそんなに覚えてるんですか? みんな優秀なんですね。」



 授業の進捗についてあれこれと話しながら、

レナードとルビーが歩き続ける。


 どうやら、三姉妹が独り立ちできる日は

そう遠くないようだ。


 そのことに嬉しさや寂しさを感じているのか、

ルビーが他愛もない話を続ける。



「今の暮らしは、怪盗をやってたころからは想像もつかないわね。

あの頃はみんなを食べさせるのがやっとだったし。」


「ムルの町への罪滅ぼし、いつかできるといいですね。」


「そうね。 あの子たちを無事に送り出せたら・・・。

まあ、その後はまずあんたたちにも力を貸さないとね。」


「すみません、僕の目的に付き合わせてしまって・・・。」


「気にしないでよ。 こっちも新しい目標ができて

いろいろとやる気が出てるんだから。

・・・それにしても、あんたの探し人、ムルの町にはいそうにないわね。」


「みたいですね・・・。

そろそろ他の町を探しに行った方がいいかな・・・。」



 町へ通う中、レナードはルビーの力も借りて

かつての幼馴染であるシルヴィアのことを探していた。


 ルビーは相手が巨乳であるかどうかを見破るほどの

鋭い観察眼を所持している。


 その観察力は、これからの旅の中で

いろいろと力になってくれそうだった。



「ねぇ、ところでさ・・・、

あんたは探してる人が見つかったらどうするの?」


「えっ? そうですね・・・、まずはいろいろと

お話したいです。 話すことがいっぱいあって・・・。」


「ああ、そうじゃなくてさ、身の振り方のことを聞いてるの。

目的を達成しても旅を続けたりするわけ?」


「旅は・・・、旅は続けることになるかな・・・。

マイナさんとは約束してるんです。

巨乳の女性でも安心して暮らせる場所を探そうって。」


「あら、先約があったのね、残念。

もしもあんたさえよければ

あの子たちと一緒に暮らさないかなって思ってたの。」


「ユカさんたちとですか? それはまた急な話ですね。」


「だってあんた、ずいぶんと気に入られてるじゃない。

この間も4人で面白いことしてみたいだし♪

下着姿の3人にやらせてたのかしら?♪」


「あ、あれはその、皆さんが・・・。

って、見てたなら助けてくださいよ・・・!」


「いいじゃん、役得だって思っておきなさいよ♪

あんた巨乳が怖いどころか好きなんでしょ?

・・・だからさ、もしよかったらいつかあの子たちの側にいてもらえたらって。」


「それは・・・、うーん・・・。

どうなるか分かりませんけど・・・。」


「今は答えなくていいわ。

嫌ってわけじゃなさそうだし、

その時が来たら改めて決めてちょうだい。」



 真剣な話やからかうような話が交互に行われ、

レナードもやや調子がくるってしまう。


 その後はとくに大した会話もなく、

森の中を進む二人だったが・・・。



「しっかし巨乳の女性が暮らせる場所か~・・・。 見つかったら素敵なことね。

私からすればいろいろな意味で夢物語だけど・・・。

あ~、でもそれに近い場所はあったかも?」


「・・・えっ? ほ、本当ですか!?

いったいどこに・・・!?」


「いや、私も今まで忘れてたんだけどさ、

まだ胸が大きくなかったころに噂を聞いたことがあるのよ。

ある町で巨乳の女性を匿ってる場所があるって。」


「そこに行けばもしかしたらお姉ちゃんが・・・、

それにマイナさんたちも安心して暮らせるかも・・・。

どこにあるんですか!?」


「いや、多分あんたが考えてるような場所じゃないと思うわよ?

ただ何かこう、エスティスの町でそんな噂を聞いたことがあって・・・。

あんた場所知ってる?」


「いえ、聞いたことはありません。

いったいどこの町ですか?」


「地図見ないと正確な場所を言えないわ。

記憶も曖昧だからもうちょっと思い出した方がよさそうだし、

帰ってからでいいわよね?」


「はい、ありがとうございます・・・!」



 思わぬ形で探し人につながるかもしれない情報が手に入り、

レナードの足取りは自然と軽くなる。


 すぐにでも話を聞こうと無意識のうちに歩みが早くなり、

いつもより少し早く拠点へ到着していた。


 しかし、壊れた門をくぐって中へ入ったところで

不穏な声が聞こえてくる。



「彼女たちを放せ!」


「・・・! 今のはドロシーさんの声!?

何かあったんでしょうか!?」


「まさか・・・、急いで! あの子たちが心配よ!」



 ルビーは荷物を捨てて咄嗟に駆け出しつつ

レナードに呼びかける。


 驚いていたレナードも、緊急事態だと理解して

ルビーに次いで駆けていく。


 そして二人が叫び声のする場所へ到着すると、

そこには驚くべき光景があった。



「ちょっと何するのよ! 私たちを放しなさい!」


「ミカ、チカ! 大丈夫!?

あんたたち、姉さんが帰ってきたらただじゃおかないんだから!」


「た、助けて~!」


「放して・・・!」


「くそ・・・! 来るな! その子たちを放せ!」



 黒いローブを身にまとった謎の集団が、

マイナたちを捕まえていた・・・!


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