その5 レナードの考え

「これで群れは全滅できたようね。

じゃあ肉の処理とか売れそうな物を取りましょう。」



 モンスターの狩りを行っていたルビーとレナードだが、

6匹程度の群れをほとんどルビーが倒してしまっていた。


 探す手間や肉などの運搬を考え、

ここで狩りを終えて持ち帰る準備を始める。



「処理とかは分かるんでしょ?

だったら特に教えることはないわね。」


「ルビーさん、すごかったですね・・・。

そんなナイフで的確に急所を突いて仕留めちゃうなんて。」


「まあ、これでも現役時代はダンジョン専門だったからね。

地上のモンスターならこのナイフでも問題ないわ。」



 冒険者としては格上であるルビーの実力に敬意を表しつつ、

レナードも処理を手伝う。


 少しの間沈黙が続いていたが、ふとルビーが声をかけてきた。



「ねえ・・・、そういえばあんたたち、

旅してるんだよね?

巨乳の女性を連れて旅だなんて、ずいぶん思い切ったことしたわね。」


「こうなったのは半分くらい成り行きなんですが・・・、

旅を始めたのは別の理由があるんです。」


「へぇ、それって聞いてもいいやつ?」


「そうですね、今さら隠すことでもないですから

よければ聞いていただけますか?」



 そうして、レナードは手を動かしつつ

これまでのいきさつを話す。


 巨乳の女性である幼馴染の姉を探していること、

いろいろあって女神の祝福に目覚めたこと。


 そしてマイナとドロシーに出会ったことにも触れ、

ここまでやってきたことを告げた。



「そう、それで旅してたんだ・・・。

・・・悪かったわね。」


「えっ? どうしたんですか、急に。」


「ここへもその女性を探しに来たんでしょ?

それなのに私たちの個人的なお願いのために

旅を中断しちゃったから・・・。」


「ああ・・・、そのことでしたらそこまで問題じゃありません。

お姉ちゃんを探すのに何日かは滞在するつもりでしたから。」


「そりゃあ、この牙なんかを売ったり

買い物したりと足を運ぶでしょうけど・・・。」


「それに気になることもできましたので。」


「気になること?」


「あの・・・、昨日の話に出ていた

魔王を崇拝する団体のことで。」


「終末教のこと? それが何か・・・、あ、もしかして。」


「はい。 巨乳の女性を捕まえるんでしたよね?

それであの姉妹の皆さんも狙われてるとか・・・。

もしも、お姉ちゃんが捕まってるとしたらって考えて・・・。」



 その言葉にルビーはレナードの心中を察する。


 探し人が捕まえられているのか、

あるいは生贄となってしまったのか、

その可能性を危惧しているようだ。



「そうね・・・、可能性は0じゃないわ・・・。

やつら、どうも巨乳の女性を探す何らかの技術を

持ってるみたいでさ・・・。」


「そ、そんなものがあるんですか・・・!?」


「恐らく、ね。 ここへ来るまでにあの子たちを狙う刺客に

二回くらい襲撃されたのよ。 隠れながら進んでたのに。」


「だとしたら、何らかの方法で

居場所がばれていたってことですね・・・?」


「あくまでも可能性だけどね。

幸い、縄張りを抜けられたのか途中から来なくなったけど。」


「そんなものが・・・。」



 ルビーの言葉に、レナードはますます

不安そうな表情になる。


 最悪の可能性が頭をよぎり、

いやな考えが離れなくなっていた。


 そこへ、ルビーが元気づけるかのように

明るい声で言葉を続ける。



「でも、そう悲観することはいらないかもしれないわ。

あいつら、魔王復活の儀式に関しては

妥協してないみたいだから。」


「妥協? どういうことでしょう。」


「日時とか年月とかをいろいろ考慮して

生贄を選んでるって話よ。

それであの子たちを躍起になって捕えようとしているの。」


「じゃあ・・・、条件に合わない女性は

捕まえたりしないんですか?」


「そこまでは分からないけど、

年単位で待つような可能性もあるから・・・。

実際、あの子たちは捕まってた当時、半年後に生贄だって話だったそうよ。」


「となると、もし捕まっていたとしても

まだ犠牲になっていない人が大勢いるかもしれないと。」


「まあ、そうね。 だから万が一にも

終末教のやつらを見つけたら、

捕まえていろいろと吐かせてやりましょうよ!」


「・・・そうですね。 そうします!」



 ルビーの励ましにいくらか元気を取り戻しながら、

レナードたちは肉の処理を続ける。


 そしてふと、今度はレナードの方から

ルビーに話しかけていた。



「あ、そうだ。 実はもう一つ気になることがありまして・・・。」


「あら何よ。 今度は誰の話?」


「いえ、ルビーさんのことなんです。

昨日、マイナさんとドロシーさんが

巨乳の女性だってすぐに見破ってましたよね?」


「ああそれ? あんなのはまあ、半分くらい勘よ。

いろいろと理由はあったんだけどね。」


「でも、僕には全然分からないことです。

だからその・・・、ルビーさんの力を貸していただけませんか?」


「ええ? それってひょっとして・・・、

あんたの探し人を見つけるために

巨乳の女性を片っ端から見つけて欲しいってこと?」


「聞き込みだけでは不十分だって思ってたんです。

出来る範囲で構いませんから、どうか・・・!」


「・・・ん~~。」



 レナードの申し出を受け、ルビーは考え込んでしまう。


 三姉妹の面倒を見てもらっている立場でもあり、

断りにくいのは事実であった。


 しかし、ルビーは顔を上げると

優しい笑顔でこう告げる。



「いいわよ。 協力してあげる。

ただしあの子たちが無事に働けるようになるまでね。」


「ほ、本当ですか!? ありがとうございます!」


「もともと、あなたたちにお願いした時点で

事が済んだら私はあの子たちから離れようと決めてたの。

理由はどうあれ、私は立派な泥棒なんだから。」


「ルビーさん、でもそれは・・・。」


「いいのよ。 言い訳はしない。

・・・かと言って堂々と自首するわけにもいかないけどね。

まあ・・・、せめて盗んだ分はいつか返せればと思ってるわ。」


「じゃあ、少しずつでも返しましょう。

あの町に少しでも貢献しましょうよ。」


「そうね・・・。 じゃあそれまではあんたたちにも

めいっぱい力を貸してもらうわ。

それが終わったら、今度は私が力を貸す。」


「ぜひともお願いします。」


「ついでに戦闘の訓練でもしてあげようかしら。

マイナは難しいでしょうけど、あんたとドロシーには

軽く手ほどきしてあげる。」


「お、お手柔らかにお願いしますね・・・?」



 話をしている内に全ての処理が終わり、

たっぷりの肉と売れそうなモンスターの部位を持ち帰るレナードとルビー。


 荷物こそ増えていたが、お互いにその足取りは

来る時よりもずっと軽かった・・・。


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