その4 三姉妹の学習

 ルビーの頼みを聞くことになった三人・・・、

マイナとドロシーは、それぞれ自分たちの教えられる範囲で

三姉妹に指導を始める。


 彼女らも思うところがあったのか、

料理や勉強を教わることに対して文句は出なかった。



「おはようみんな。 突然で悪いんだけど、

今日からこの二人にいろいろと教えてもらうことになったわ。」


「お名前は教えてたかしら? マイナよ。

私はみんなに料理を教えてあげる。」


「私も名乗っておこうか、ドロシーだ。

みんなに軽く勉学を教えるから、よろしく。」


「そのためのお客さんだったんだ~?

私、お料理は興味あるかも~。」


「私は・・・、強いて言えばお勉強?

ずっとモンスターを警戒してばかりだったから、

こういうのが楽しいかも。」


「それで・・・、そこの男の子も

私たちに何か教えたりするの・・・?」


「僕は・・・、あ、僕はレナードです。

僕が教えられることはルビーさんもできることですので、

皆さんに教えられることはないと思います。」


「ふぅん、ならいいけど・・・。」



 マイナとドロシーに対しては、

同じ巨乳なのかすんなりと受け入れる姉妹たち。


 しかしレナードに対しては、自分たちがどう扱われていたのか

身に染みているらしく、警戒心を抱いているようだった。



「ユカ、心配しなくても

この子は巨乳が嫌いじゃないんですって。

むしろ触りたいとか思ってるぐらいよ。」


「ちょ、ちょっとルビーさん!?

急に何を言い出すんですか!?」



 警戒心をとくためか、からかっているのか

ルビーがとんでもないことを言い放つ。


 もっとも、そう簡単には信じられないのか

三姉妹の反応は芳しいものではなかった。



「ええ~、うっそだ~。

みんな怖い怖いって言ってるのに~。」


「本当に・・・? ちょっと信じられない・・・。」


「姉さん、それ本当なの?」


「本当よ~? 後で試してみたら?」


「だから違いますって! 触りたいとかそんなこと・・・!」


「ほら、本人も違うって言ってるじゃない。」


「言ってることが全部真実とは限らないのよ?

レナードにはそういう部分の実験・・・、指導役になってもらうのがいいかしら。

まあとりあえず、二人ともこの子たちをよろしくね?」


「心得た。 さて、まずはどのくらい学問を修めているのか

確かめるところから始めようか。」


「こっちもオッケーよ。 あ、お昼ご飯はどうするの?

とりあえず今ある食材で料理を作る予定だけど・・・。」


「あの中から適当に持っていくわ。

みんな、私はレナードと一緒にモンスター狩りへ行くから

この二人の言うことを良く聞いていてね?」


「「「はーい」」」



 その場に残る者と廃墟の外へ出る者、

レナードたちは二手に分かれて行動することになった。


 外へ狩りに出たレナードとルビーは、

モンスターを探して森の奥深くまでやってくる。



「まだモンスターと出会わないなんて、

思ったよりも少ないですね。」


「ここらへんは結構前に狩りつくしたし、

今もたまに肉目当てでモンスターを狩ってるからね。

ま、獲物の探し方にもコツがあるから待ってなさい。」


「それは頼もしいです。 でも・・・、本当にいいんですか?

ルビーさんの武器、解体用のナイフですけど・・・。」


「あんたの武器を借りたらあんたが困るでしょ?

心配しなくてもこれで戦えるから・・・。 ・・・しっ!」



 鋭い目つきで前方を見るルビーの様子を見て、

レナードも咄嗟に息を殺しながら身を低くする。


 耳を澄ませてみると、草木をかき分けるような音が

わずかに聞こえてきた。


 自分よりもずっと索敵能力が高いルビーの実力に、

レナードは思わず感服する。



「グラスボアね。 数は1体・・・、

でもこれは離れた位置に群れがいる動きよ。」


「どうするんですか? 孤立してる奴から倒します?」


「ええ。 でも仲間を呼ばせないように倒すわ。 見てなさい。」


「ルビーさん!?」



 声を潜めながらの会話を終わらせ、

ルビーが周りの木々に隠れながら素早く相手に近付く。


 敵のモンスター、グラスボアはその気配に気づいたのか

周囲を確認し始めるものの、

まだ警戒しているだけらしく仲間を呼ぶことはない。


 その間も、風や相手が草木を揺らす音に紛れながら

ルビーがどんどん近付く。


 かなり近くへ来たところで、

ルビーが自分の場所とは反対の位置へ石を投げた。


 そしてモンスターが音に気付いてその方向を向いた瞬間、

一瞬で距離を詰めて相手の喉笛にナイフを突き立てた。


 グラスボアはそのまま声を出すこともできず

血を流しながら暴れるものの、いつしかゆっくりと地面へ倒れ込む。



「・・・ふぅ、腕は鈍ってないみたいで良かったわ。」


「ルビーさん・・・、す、すごいです・・・。」


「ありがと、でも警戒は緩めちゃだめよ。

まだ他にも何体かいるはずだから。 できれば逃したくないわ。」


「あ、分かりました・・・。」



 実力の高い冒険者であったことが伺えるルビーの手腕に、

レナードが少なからず尊敬の念を抱く。


 一方そのころ、マイナたちは三姉妹に

あれこれと教えていた。



「じゃあまずは簡単な計算問題から始めよう。

これはできるようになって損はないぞ。」


「は~い。」


「これは得意・・・。」


「私も負けないわよ。」



 ドロシーが勉学を軽く授業したり・・・。



「最初は簡単な手伝いをしつつ

料理のおいしさから学んでもらおうかしら。

調味料が足りないけど、この保存食の塩分を使って・・・。」


「この固いお肉が柔らかくなるの~? 本当に~?」


「この野菜、苦くて嫌いだったのに、

料理してもらったらまあまあ食べられる・・・。 不思議・・・。」


「ミカの好き嫌いも少しは治ってくれるかしら・・・。

それにしてもいい匂いがしてきたわ。」


「いずれは調味料や料理器具も買ってもらってから

練習に移るかな? しかしこの野菜は固くて切りにくい・・・。」



 マイナが料理を教える、というよりも

みんなで昼食を作るといった

比較的楽しそうな勉強が進んでいた・・・。


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