その3 ルビーの相談

 盗みを働くのをやめる条件として

悩みの解決を提示するルビー。


 助けて欲しいと真剣に言われ、

レナードたちはいくらか驚き戸惑っていた。



「知恵を貸して欲しい・・・っていうのはどういうこと?

何か厄介ごとを抱えてるとかそういうわけ?」


「そうと言えなくもないけれど、

とにかく今は現状をどうにかしたいの。」


「つまり・・・、この廃墟で隠れながら暮らすという現状を

なんとかして変えたいってことかい?」


「そうよ・・・。 それがどうにかできれば、

少なくとも盗みを働き続ける必要はなくなるから・・・。」


「ルビーさんはあの人たちのために

食料を盗み続けてたんですよね・・・。

じゃあ、問題はお金がないっていうことですか?」


「やっぱりそれもあるんだけど、

他にもいろいろと問題だらけ・・・。

半年以上はここで暮らしているけど、いつまで続けられるか分からないわ。」



 暗い声で言うルビーの様子に、

三人は顔を見合わせつつ頭をひねる。


 ひとまずは意見を出したり、現状を尋ねることにした。



「じゃあ・・・、やっぱりまずは食料について考えてみるかい?

ルビーは元々冒険者をやってたんだろう?

モンスターを倒して肉を手に入れるっていうのは?」


「最初はそうしていたんだけど、

肉ばかりを焼いて食べるのはすぐに限界が来たの。」


「料理は誰もできなかったの?

モンスターを倒してるならいろいろと売って

他にも食料を買えたでしょうに。」


「残念ながら料理は誰もできなかったわ。

おまけに闇ギルド相手に取引してたから

結局はお金が足りなくなって、武器も売っちゃった・・・。」


「闇ギルドってモンスターの素材も安く買いたたかれるし、

逆に物を買う時は高くなりますものね。

それで盗みを始めるようになったんですか?」


「ええ・・・、その頃に拠点をここへ移して、ムルの町でね。

雨風しのげる場所を見つけられたのは運が良かったわ。」


「まずは住処よりも先にお金や食料の問題を解決する必要があるか・・・。

いや、仮に問題が解決したとして、隠れ住むのが一番安全では?

多少壊れているとはいえ、ここは拠点としてかなり優秀じゃないか。」


「・・・あの子たちに関しては、

巨乳であることを隠しながら町に住まわせた方が安全だと思うわ。

あなたたちには言っておきましょうか・・・。」



 ルビーは極力誰にも聞こえないようにと、

更に声を落としながら話を続ける。



「見れば分かるでしょうけど、あの子たちは三姉妹で

私はそもそも他人だったの。」


「それはなんとなく気付いてました・・・。

いったいどういういきさつでみんな一緒に暮らすことになったんですか?」


「出会ったのは偶然だったわ・・・。

あの子たちが"生贄"として運ばれるのを

たまたま私が目撃して、助けたのよ。」


「いけにえ・・・? 生贄って何の?」


「魔王を崇拝する危険な団体、"終末教"の生贄よ。

聞いたことあるかしら?」



 ルビーの言葉にレナードとマイナは首を横に振り、

知ってそうな人間の方を向く。


 ドロシーは二人の視線を受け止めると、

静かに口を開いた。



「"終末教"とは、魔王がいたころから存在するとされる集団だ。

簡単に言うとやつらは魔王を崇拝している。」


「そんな集団がいたんだ・・・。 でもあの子たちが生贄ってどういうこと?

私たち巨乳は"魔王の生まれ変わり"だなんて呼ばれたりするけど・・・。

それを生贄にしちゃうの?」


「やつらの目的はあくまでも魔王の復活よ。

だから巨乳の女性を生贄にすれば

魔王が今世に降り立つと信じてるの。」


「ある場所ではそいつらによる"巨乳狩り"が行われていると聞く。

しかしここらにもいるとは知らなかったな。

私が聞いたこの噂は別の大陸のものだったぞ?」


「別の大陸のことは知らないけれど、

私が出会った奴らはそう名乗っていた。

それで、とにかくあの子たちを助けたの。」


「そして今も狙われ続けている、というわけか・・・。

なるほど、それはまだ町にいた方が安全かもしれないな。

すくなくとも大っぴらには活動できないだろうし。」 


「そういえば、ここを離れるかどうかって話をしていたのよね。

あれは私たちをその集団と勘違いして

逃げる手はずを整えていたってことかしら。」


「ルビーさん、とても大変だったんですね・・・。」


「大変と言えば大変だけど、

同じ巨乳同士でやっぱり助け合わないとね。

こんな世の中、私たちにはいがみ合う余裕なんてないんだもの。」


「だから私たちを信用してくれたの?

なら、こっちも応えてあげないとね♪」


「そうだな・・・。 じゃあできることから始めるかい?

まずはマイナに料理を教えてもらおうじゃないか。」


「マイナ・・・、あなた料理ができるの?」


「これでも食堂の厨房で働いてたの。 指導は任せて♪

あの子たちをどこでも雇ってもらえる程度の腕にしてあげるわ。」


「じゃあ私は・・・、勉強でも教えようか。

雇ってもらうにしても学問以外に

覚えることはいろいろありそうだし。」


「マイナ、ドロシー、・・・ありがとう。」



 二人の言葉に、ルビーが初めて嬉しそうな顔を見せる。


 ひとまず当面の目標は決まったものの、

そこでレナードが静かに問いかける。



「あの・・・、僕は何をしましょうか・・・?

モンスターの倒し方とかだったら

教えられると思いますけど・・・。」


「それは私もやってみたけど、駄目ね。

あの子たちは荒事に向いてないわ。」


「そうですよね・・・、先輩のルビーさんがいるんだから

わざわざ僕が教える必要は・・・。」


「あんたも協力してくれるなら、

私と一緒にモンスターを狩ってちょうだい。

今ある食料だっていつまでも保たないし。」


「あ・・・、じゃあそうします。

なんとか生活できるぐらいの肉やお金を確保しないといけませんよね。」



 いろいろあっったが、旅を一時中断して

ルビーを助けることになったレナードたち。


 明日からは、三姉妹にあれこれ教える日々が始まりそうだ・・・。


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