その9 魔法の道具

 ムルの町を騒がせていた『おっぱい怪盗』こと

ルビーを捕まえた三人は、

ひとまず盗みをやめさせようとする。


 するとルビーは自分の悩みを解決してくれれば

盗みをやめると宣言した。



「悩みって、どういうことですか?

あなたのアジトに一体何が。」


「・・・それは直接見てもらった方が早いわ。

それでどうなの? ほどいてくれるわけ?」


「えぇと、それは・・・。」


「・・・はっきり言って信用はできない。

そのまま逃げる可能性が高いだろう。

せめて、アジトとやらに何があるかを言うべきじゃないのかい?」


「今は私を信用してとしか言えないわ。

それでどうなの? 協力してくれるの?」



 ルビーはあくまでもドロシーの方を見ず、

レナードにだけ尋ねるようにまっすぐ見つめてくる。


 レナードは何度も頭をひねり、呻いていたが

やがて決心したかのようにこう告げる。



「・・・分かりました。 ルビーさんを信用します。」


「おいおい、本気かい? このまま逃がしたとなったら

また厄介なことになりそうだぞ。」


「私は信じていいと思うわ。

なんとなく、私たちを信頼してくれたように見えるし。

どちらにせよこのまま置いておくわけにはいかないもの。」


「やれやれ、二人ともお人よしだな・・・。

しょうがない、それなら彼女ではなく私は二人を信じるということにしよう。

ただ、最低限これだけはやっておいた方がいいだろう。」



 肩をすくめつつも二人の意見に同調したドロシーは、

ルビーの方へ歩み寄る。


 そしていきなり相手の谷間に手を突っ込んだかと思うと

何かを取り出した。



「ふむ・・・、これが君の使っていた魔法の道具かな?

隠しておくならここだろうと思ったよ。」


「同じ巨乳とはいえよく分かったわね・・・。」


「趣味で他人の秘密をたくさん探っていたもので。

ところでこれはどういう効果があるんだい?」


「悪趣味ね。 それは【疾風の秘宝】、

使い手を風のように軽くしてくれるわ。」


「へぇ、それであんなに飛び回っていたわけか。

・・・ということは胸も軽くできるのかい?」


「当然よ。 といっても使うにはちょっとしたコツがいるから

そんなすぐには使えないわよ?」


「そうか・・・。 いや、まあいい、とりあえず預かっておこう。

で、君のアジトとやらはどこに?」


「いや、その前にこれを解いてってば。」


「ああすまない、忘れていた。」



 ドロシーがローブから本を取り出しつつ手をかざすと

ルビーの体を縛っていた蔓や根が地面へ落ちる。


 ルビーは大きなため息を吐くと、

立ち上がって体の自由を確かめるように動いた。



「あ~、やっと解放されたわ。

じゃあ三人とも・・・、そういえば

あんたたち二人の名前は?」


「私はマイナよ、こっちはドロシー。」


「了解。 マイナとドロシーね。

じゃあ三人ともこっちへ付いてきてちょうだい。

おっと、ちゃんと手に入れた食料も忘れないようにっと。」



 そう言って側に置いてあった食料を背負い、

ルビーが三人を先導する。


 ルビーの行動になんとも言えない表情を見せながら、

レナードとマイナが、そして少し離れつつドロシーが歩き出す。


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