その8 怪盗の頼み

 無事に『おっぱい怪盗』を捕まえたレナードたちは、

ひとまず町からある程度離れておく。


 怪盗を縛り上げはしたものの、

すでに一番の目的であった素顔の確認は済んでいた。


 レナードの探している女性とは違ったため

悲しくもあり、嬉しくもあったが、

兵士へ突き出すわけにもいかず処遇に困ってしまう。



「で・・・、あんたたち一体何なのよ?

しかも私を捕まえて兵士へ引き渡すわけでもない、

どういうつもりなわけ?」


「ええと・・・、一番の目的は

あなたの素顔を確認することだったので・・・。」


「なにそれ、本当に私のファンだって言うんじゃないでしょうね?

冗談で言ったつもりだったのよ?」


「いや、ファンではないよ・・・。

しかし、怪盗をやってたときと性格が随分違うね?」


「当たり前でしょ、あんなの巨乳を迫害する奴らに対する挑発よ。」


「そうなのね・・・。 ねぇちょっと待っててもらえる?

あなたをどうするか話し合うわ。」



 マイナの提案で、三人はこれから彼女をどうするか

軽く話し合うことにした。



「それでどうしましょう・・・。

さすがに突き出すのはかわいそうだし・・・。

とりあえず解放はするけど、これ以上の盗みをやめてもらう?」


「僕はそれでいいのですが・・・、

でもどうやってやめさせましょう。」


「よし、ここは私の祝福で彼女の秘密を握ろう。

そうすれば多少なりとも交渉材料になるだろう。」


「いいわね、それでいきましょ。」



 方針も決まったため、ひとまずドロシーに

この場を任せる残りの二人。


 ドロシーは改めて怪盗の方へ行くと

咳払いをしつつ話を切り出した。



「さて、我々はあなたを兵士に突き出そうとはしない。

その代わりといってはなんだが、

盗賊行為をやめてもらえはしないだろうか?」


「無理な相談ね。 はっきり言ってやりたくてやってるわけじゃないわ。

でもやらないと生活できないもの。」


「その胸では難しいかもしれないが、

不可能というわけではないだろう?

もし応じてもらえないというのであれば・・・。」


「私を脅すつもり? やってごらんなさい。

私を引き渡そうとしたらあんたら二人が

巨乳だって兵士たちにばらしてやるから。」


「・・・! な、なぜそれを・・・!?」


「あらやっぱりそうなんだ。 今は胸を無理やり押さえつけてるってわけね。

まあ半分は勘だけど、動きや仕草で分かるわよ。

足運びや視線に至るまで、胸が大きい人とそうでない人じゃ結構違うのよね。」


「・・・申し訳ないが再度話し合いの時間を設けたい。

しばし待ってくれ。」



 秘密を探るつもりが先に秘密を暴かれてしまい、

ドロシーは二人の元へ引き下がる。



「いやすまない、私の一番の秘密が先に知られていた。

これでは秘密を暴くことができない・・・。」


「そういえば、ドロシーさんの祝福は

秘密を交換するようなものでしたね。

既に知られている秘密は使えないわけですか・・・。」


「じゃあどうする? ここへ放っておくわけにもいかないし、

いっそのこと解放しちゃう?」


「そうなるとまた盗人に戻りますよね、間違いなく・・・。

うーん、なんとか説得できないかなあ・・・。

一応やってみます。」



 結局大して話し合いもまとまらないまま、

今度はレナードが話に行く。



「あの・・・、怪盗さん・・・、

・・・そういえばお名前を聞いてませんでした。

教えてもらってもいいですか?」


「・・・ルビー。 あんた、レナードって言ったっけ?

正直言ってあんたが一番不可解なんだけど。」


「えっ? どういう意味ですか? ・・・ルビーさん。」


「そのまんまよ。 あんたなんで巨乳の女性と一緒にいるわけ?

私を捕まえた時もそうだけど、怖くないの?」


「ええと・・・、まあその、胸の大きな女性は怖くないんです。」


「ほんとに? いや、わざわざ一緒にいる時点でそうか。

私の胸も怖がらなかったし。

ふぅん、でも本当に怖くないんだ・・・。」



 ルビーは興味ありげにレナードを眺め、

品定めするかのようにじろじろと見つめる。


 そして、何が琴線に触れたのかは分からないが、

唐突にこんなことを言い出した。



「ねぇ・・・、この蔓だか根っこだかをほどいてくれたら

あんたたちを私のアジトに案内してあげてもいいわ。」


「アジト・・・? そこに行ってどうするんですか?」


「私に盗みをやめさせたいんでしょう?

もしも私の抱えている悩みを解決してくれるのなら、

綺麗さっぱり足を洗ってあげてもいいわ。」



 急な言葉に、三人はお互いの顔を見合わせる・・・。



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