その4 調査

 他の町に届くほどの噂になっていたムルの町の巨乳女性、

『おっぱい怪盗』を呆気にとられながら見ていた三人。


 ひとまず宿を取って活動しようと考えていたが、

意外にも容易く宿を取ることができてしまった。



「随分すんなりいきましたね・・・。

もっと警戒されるかと思ったんですが。」


「あの『おっぱい怪盗』とやらにばかり注目がいってるのかもしれないね。

なんにせよこっちとしては助かるよ。

久しぶりのまともな宿なんだから・・・。」


「それで・・・、これからどうするの?

とりあえず集めていたモンスターの牙なんかを換金する?

それと消耗品はまた買った方がいいかしら。」


「それもやりたいんですけど・・・、

あの怪盗の情報を集めてみる、

っていうのはどうでしょうか・・・?」



 レナードの提案を聞いた瞬間、

ドロシーとマイナが少しだけ硬直する。


 そして少し考えたところで

ドロシーが先に口を開いた。



「レナード君もしかして・・・、

あの『おっぱい怪盗』が目的の女性かどうかを

確認したいのかい?」


「はい・・・。 まず違うと思うんですけど、

ちゃんと顔を見ないことには断言できなくて・・・。」


「じゃあ、捕まえるつもりなの?」


「できればそうします。 どちらにせよ

盗みを働くのはやっぱりいけないことですから。」



 もっともな発言をするレナードだったが、

マイナとドロシーは少しだけ顔を曇らせる。


 レナードが不思議に思っていると、

今度はマイナがこう言った。



「盗みを働くのは間違いなくいけないことだよね・・・。

でも私は、あの怪盗を堂々と非難することはできないかな。」


「私もね・・・。 私とマイナはまだ運がいい方なんだ。

巨乳の女性がまっとうに生きるのはとても難しい。」


「あ・・・。」


「もちろん悪いことを正当化はできないけれど、

もしも胸のことを隠して食堂で働けていなかったら

私もああなってたかもしれない・・・。」


「レナード君の方が正しいとは思うけど、

私たちの感情は、少しだけその怪盗に同情するかな・・・。」



 暗い声の二人の言葉に、レナードは顔を俯かせてしまう。


 確かに、巨乳の女性が生きるとなると

まっとうな方法では難しいのだろう。


 配慮が足りなかったことを反省すると、

レナードは静かに顔を上げた。


 

「・・・ごめんなさい、お二人の気持ちも考えずに。

僕が軽率でした・・・。」


「あ、いや・・・、これは私たちのわがままが大部分だから

そこまで気にしないでおくれ。」


「そ、そうそう、正しいのはレナード君の方なんだし。

だけど・・・、確認が目的だったら、

捕まえて兵士に突き出すまでは・・・。」


「そう、ですね・・・。どちらにせよ

お尋ね者の僕たちがそこまでするわけにもいかないでしょうから。」


「じゃあ・・・、とりあえずは確かめるのを主としよう。

私が情報収集に行くから

君たちはその間に換金作業を頼むよ。」


「分かりました。 あ、きっと巡回してる兵士は多いでしょうから

気を付けてくださいね?」


「ああ、そちらもね。」



 ひとまず方針が決まった三人は分かれて行動する。


 マイナとレナードはモンスターの牙や皮などを

買い取ってくれる場所を探し、

ドロシーが『おっぱい怪盗』の情報収集に出て行った。


 そして夕暮れに差し掛かったころ、

三人が再び宿屋へ集結する・・・。


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