その2 噂の女性

 廃墟と化した町を通りすぎ、

三人は目的地である『ムルの町』へたどり着いていた。


 しかし見張りの門番がいる以上、

手配書が出回っている彼らが町へ入るのは

簡単なことではない。



「ようやく到着しましたね・・・。

どうやって入りましょうか。」


「手っ取り早いのは賄賂を渡すことだろうけど、

モンスターの素材を換金しないと

手元にお金はもうあまり残ってなかったよね?」


「賄賂・・・、それで済むならその方法でいいのですが、

お金は、これじゃ足りませんよね。

素材をそのまま渡すわけにもいかないし。」


「いざとなれば私が門番の秘密を掴んで脅すのに使うか・・・。

秘密は広めれば広めるほど価値が減っていくから

使わずに済めばいいのだが・・・。」


「・・・ねえ待って、何か騒いでない?」



 町へ侵入する方法を模索していたところで

何やら様子がおかしいことに気付くマイナ


 レナードとドロシーも町の入口を見てみると、

何やら警備の兵士らしき人間が

大きな声で話し合っているようだった。


 離れた位置にいる三人には

内容がはっきりとは分からないものの、

断片的にあれこれと聞こえてくる。



「また・・・」 「南地区・・・」 「おっぱい・・・」



 そして大声の議論が終わったかと思うと、

なんと全員が町の中へ入っていく。


 門番がいなくなってしまった状況に、

三人は呆然となっていた。



「・・・これはどういうこと?

誰もいなくなったみたいだけど・・・。」


「分かりません・・・。 どうやら何かあったみたいですけど。」


「それなりの緊急事態というわけかな。

何があったか知らないけど、チャンスであることは間違いない。」



 レナードたちはこれ幸いとこっそり入口へ近づき、

様子を伺いつつ町の様子を伺ってみる。


 そして見張りが誰もいないことを確かめながらも、

遠くで何か騒いでいることに気が付いた。



「町中が騒がしい・・・。 やはり何かあったみたいだね。」


「様子を見に行った方がいいかしら?

私たちが人目に付くのは危ないと思うけど・・・。」


「・・・行ってみてもいいですか?

さっき何か気になることが聞こえたように思うんです。」


「そういえば・・・、おっぱいって言葉が聞こえたような・・・。」


「巨乳の女性が見つかって騒ぎになってしまったのかもしれないね。

うん、確認しに行った方が良さそうだ。」



 話し合いが終わると、三人は顔を隠しながら

声が聞こえる方へ駆けていく。


 するとすぐに騒ぐ声が聞こえ始める、

というよりも騒ぎの方から近付いて来たのか

人々が上を見ながら走っていた。



「あの人たち、一体どこを見ながら走ってるのかしら?」


「空・・・? いや・・・、屋根の上です!

誰か立ってます!」


「あ、あれは・・・!?」



 レナードたちは建物の屋根に人影があると気付いて

遠目にそれを見ようとします。


 そして・・・、その正体が女性であることを

一目見て理解してしまいました。


 というのも、その影にはとても分かりやすい特徴が、

遠くからでも分かるほど大きなおっぱいがあったのです。



「オーッホッホッホ! 皆様お見送りご苦労!

今回もこの食料はワタクシ『おっぱい怪盗』がいただきましたわ!」



 その女性、自らを『おっぱい怪盗』と名乗る人物は

高らかに笑い上げた・・・。


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