第四話 その1 滅びた町

 ドロシーの追っ手から無事に逃れた三人は、

その後も『ムルの町』を目指して旅を続ける。


 一応は再び追跡されないように警戒し、

予定していた道筋とは違うところを通っていた。


 できるだけ森や山といった歩きにくい場所を進み、

少しでも人の目を避けている。



「ここまではあの人たちに出会うことなく進んでこれましたね。

ただ、少し遠回りしてるから先回りされてないといいんですが。」


「あの人たち、私たちの目的地を知ってるのよね?

もしも待ち伏せでもされてたらどうしましょうか・・・。」


「私たちの目指す『ムルの町』はそう広くないし、

恐らく闇ギルドのような安全確実に身を隠す場所もないだろう。

どうしても多少のリスクは覚悟してもらうことになってしまうな・・・。」


「まあ、最悪の事態ばかりを考えていては

一生身を隠すことになってしまいますから・・・。

・・・あれっ? 何かありませんか?」


「なに? またモンスターがいたの?

・・・あれは、まさか町なの・・・?」


「おや、地図には何も書かれてないが・・・、

ああそうか、そういうことか。」



 山中に突然現れた、町の城壁のようなものを見て

思わず歩みを止める三人。


 しかしよく見ると壁の色は黒ずみ、

ところどころひび割れているうえに

穴すら開いている。


 そしてよく見ると中の建物が見えるほど崩れており、

もはや壁の体をなしていない。



「あれはきっと、廃墟になってしまった町だよ。

モンスターに襲撃されてしまったんだろう。」


「それって、前に話していたモンスターを寄せ付けない装置が

壊れてしまったから?」


「恐らくそうでしょう。 しかし地図にも載ってないなんて、

ずいぶん前に滅んでしまったんですね・・・。」


「せっかくだしここを通っていかないかい?

壁は壊れてるし、道も踏み荒らされていそうだが

迂回して山道を歩くよりはマシだと思うけど。」


「そうですね。 モンスターがいるかもしれないけど

多少は戦いやすいでしょう。」


「私もいいと思うわ。できれば

落ち着いて休めるところでもあれば更にいいけど・・・。」



 話し合いを終えると、三人は壊れた壁から

廃墟となった町へ侵入する。


 中に入ると崩れかけた建物に出迎えられ、

草木は伸び放題というありさまだった。


 しかし石で作られた道はわずかに原型が残っており、

それを辿って歩いて行く。



「この町が滅んでしまったのは

もう何年も前のことなんでしょうね。

いつか私の故郷もこうなるのかしら・・・。」


「いつかは分からない、だがいつかはそうなるだろうね。

モンスターを近寄らせない効力が失われれば、

あんな壁は何の役にも立たない。」


「それにしても、思ったよりも歩ける道が残ってますね。

なんだかここらへんは他より綺麗な気もします。」


「確かに・・・。 誰か手入れでもしてるというんだろうか。」


「モンスターが通ってるから草が伸びにくいとか?

草原と同じように。」


「可能性は無きにしも非ず、かな?

まあ気にしててもしょうがないか。」


「そうですね・・・。 使えそうな施設もやっぱりなさそうだし、

早いところ通りすぎてしまいましょう。

物陰からモンスターでもでてきたら厄介です。」



 あれこれと話をしながら、

三人は廃墟となった町を通り過ぎる。


 そんな彼らの後ろ姿を、物陰から複数の人間が伺っていた。



「・・・もういなくなった?」


「通りすぎちゃったわよ。

どうやら私たちを探してたわけじゃないみたい。」


「よかった~・・・。 またモンスターかと思ったら

まさかお姉ちゃん以外の人が来るなんて・・・。」


「とりあえず、あの三人組がちゃんとここを出るまで

見張っておくわよ。」


「分かった。」


「は~い。」



 謎の人物たちは三人いるらしく、

全員が女性のようだった。


 そして全員もれなく、服の上からでも分かるほどに

胸部が膨らんでいる



「ねえ、ところであの女の人たちは

おっぱい大きくなかった? それも私たちより。」


「私も見た。 あの大きさはお姉ちゃんと互角じゃない?

ねえ、あの人たちも逃げてきたのかな?」


「もしそうなら保護してあげた方がいいかもね?

でもなぜか男の子が一緒にいたけど。」


「・・・いえ、保護はやめておきましょう。」


「なんで? お姉ちゃんならきっと

守ってあげなきゃって言うと思うけど。」


「だからこそよ。 私たちだけでも大変なのに、

これ以上人が増えたら・・・。

それに男だっていたのよ、危険だわ。」


「私たちだけ助かるのって、なんかやだな~。」


「でもしょうがないかも。 今の私たちは

誰かの心配をできる立場じゃないもん。」


「それに万が一、私たちを探しに来た人間だったら

大変なことになるわ。」


「うん・・・。 また捕まったら

運よく助けてもらえる保証はないもの。」


「私、もうあそこには戻りたくない、ぜったいに・・・。」


「これは姉さんに報告しておいた方が良さそうね。

・・・もしかしたらここを離れることになるかも。」



 あれこれと話をしていた三人組は、

レナードたちを見張り続け、

その姿が町から消えたことで胸をなでおろす。


 果たして彼女たちは一体何者なのか、

『ムルの町』にいると噂の女性と関係はあるのだろうか・・・。


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