その6 ドロシーの質問

 ドロシーの追ってをなんとか退けた三人は、

隠れながら野営をしていた。


 しかしレナードは『女神の祝福』を使った反動で

体に力が入らなくなっている。



「レナード君、具合はどう?」


「やっぱりだめですね、それなりの時間使っていたから

一晩は動けないと思います・・・。」


「使った時間によって長くなるのかい?

ここまで抱えて来てもらったとはいえ

長時間使ってたようには思えなかったが。」


「そうなんです。 使ってる間の行動にもよりますが、

使った時間よりもずっと長く力が抜けちゃって・・・。」


「なるほど、そう頼りっぱなしではいられない祝福なわけか。

まあ、奴らも追っては来てないみたいだし、

ここで休もうじゃないか。」


「そうね、 じゃあちょっと早いけど食事の準備をしましょうか。

さっき倒してたモンスターの肉は回収してるのよね?」


「あ、解体して鞄の中に・・・、

そうだ、保存処理をしようと思ってたんだ。」


「じゃあ私がやっておくわ。

ついでにお昼と夕方の分も調理しておきましょうか。」



 そう言うと、マイナは鍋を使って

肉や他の食材を調理し始める。


 あまり動けないレナードと、料理のできないドロシーは

揃ってその場で休んでいた。



「助かるね。 私は料理なんてほとんどしたことないし、

まだまだレナードは動けそうにないし。」


「ええ。 野宿のやり方もすぐに覚えてくれましたし、

マイナさん、旅に関しては僕より優秀だと思います。」


「そうか・・・。 ふふ、その点に関しては

私はあまり役に立てそうにないな。」



 何気ない会話をする二人ですが、

どこか歯切れが悪く、しょっちゅう話が途切れてしまいます。


 やがてドロシーはため息を吐くと、

明後日の方を向きながらこう言い出しました。



「早々にとんでもないことに巻き込んでしまってすまないね。

だが、助けてくれてありがとう・・・。」


「ドロシーさん? 急にどうしたんです・・・?」


「いや、その・・・、謝罪はしたけど

お礼は言ってなかったような気がして・・・。」


「ああ・・・、えっと・・・、

あんまり気にしないでください。

僕たちはもう一緒に旅をする仲間なんですから。」


「そう言ってくれると助かるよ・・・。

まあその・・・、私の祝福、人探しには使いづらいかもしれないが

いつか役に立つ時がくる、と思うよ、きっと。」


「じゃあその時は、力を貸してもらいますね。」



 優しく微笑みながら告げるレナード


 それを見ていたドロシーは、

釣られたようにふっと息を吐きつつ表情を和らげていた。



「そうだね、その時は思う存分力を発揮させてもらおう。

・・・ところで、人探しをするなら

君の探す人の特徴を知っているべきだと思うんだが。」


「あ、そうですよね。 ・・・でも、もう何年も前だから

きっと見た目も変わってると思うんですよ。

一応聞き込みをするときは昔の姿を伝えてるんですが・・・。」


「その人は・・・、綺麗だった? それともかわいい?

はてまたセクシーかな? 胸は私よりも大きかったかい?」


「いえ、あの・・・、なんだか聞くべきところがおかしいような・・・?」



 当然の疑問から投げかけられる思いもよらない質問に

狼狽えるレナード。


 しかしそこに、マイナからドロシーへの呼びかけがあった。



「ねえドロシー、ちょっと手伝ってもらえない?

というか、お料理を覚えるんでしょう?

お手伝いついでに教えてあげるから来てちょうだい。」


「ああそうだ。 約束していたのを覚えててくれたんだね。

すぐに行くよ。 今日はどんな料理になるのかな。」



 ドロシーはすぐに立ち上がると、

「話の続きはまたいつか」と言ってマイナの方へ歩いて行く。


 質問攻めから解放されたレナードは、

胸をなでおろしながら料理ができるのを大人しく待っていた・・・。


 そうして休息を取り、夜が明ける少し前に

レナードは体がしっかりと動くようになる。


 三人は、『ムルの町』を目指して

再び歩き始めていた。


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