その5 計画

 ドロシーの追っ手から逃れた三人は、

動けなくなったレナードを守りつつ休息を取る。


 そこへ、マイナとドロシーも少し落ち着く余裕ができたのか、

すぐ側へ座り、来た道を眺めながらぽつりと呟いた。



「あいつら、ロブの治療を考えれば

しばらくは動けないだろう。 後の安全を考えれば

トドメをさすべきだったかもしれないが・・・。」


「・・・そこまではちょっと、怖いわ・・・。

いくらなんでも人を殺めるなんて・・・。」


「そうだな、正直に言って私も怖いから無理だ。

・・・それに私の攻撃魔法じゃどちらにせよ

命を取るまでは無理だったろう。」


「僕も、そこまでの覚悟は持てませんでした・・・。

『女神の祝福』は使い慣れてないもので、

うまく手加減できるか不安だったんです。」


「そうか・・・。 確かに、使い終わってからがこれでは

一人旅で披露する機会は少なそうだね。」


「ドロシーの秘密を暴く力といい、

女神の祝福ってそんなに便利なものじゃないのね・・・。」


「まあそうだね。 役に立つことは多いけど万能じゃない。

こうして助け合うに越したことはないな・・・。」



 どこか吹っ切れたような表情になると、

ドロシーがレナードの横へ寝転ぶ。


 それを見たマイナも、何とはなしに反対側へ寝転んだ。



「それにしても、ドロシーったら思いっきりやり返してやったわね。

あれで懲りて私たちにちょっかい出さなくなったらいいけど。」


「それはない。 が・・・、そうだといいな。

もしかしたら治療のために首都まで戻るかもしれない。

そうすれば私たちに追いつくのは難しくなるだろう。」


「このまま諦めてくれるといいですね・・・。

う~ん、やっぱり僕、しばらく起き上がれそうにないです。」


「野営は私に任せてゆっくり休んでちょうだい。

あ、ドロシーは手伝ってよ?」


「いいけど、分からないことだらけだから教えておくれよ?」



 雲一つない晴天を眺めながら、

三人の楽しそうな会話は続く・・・。


 一方、ロブは火傷を冷やしながら

部下たちに指示を出していた。



「ぐぅ・・・。 奴らはどこへ逃げたのだ。

千載一遇のチャンスなんだ、ここで捕まえなければ・・・。」


「ロブ様、無理をなさらないでください、

あなた様の怪我もそう軽いものではないのですから。」


「そうっすよロブ様、というか申し訳ないんですが

俺の方がきついですこれ。 走るどころか歩くのも難しいんですが。

見てくださいよ、自慢の鎧が壊れちまってます。」


「とんでもない一撃だったわね。

あの少年、一体何者かしら・・・。」


「ぐぐぅ・・・、止むを得ん。

ここで追いかけられないとあっては退却以外にないか。

これ以上、公務に穴を開けられんからな・・・。」


「では諸々の問題はいかがいたしましょう?

罪人を捕えられなかったとなれば批判はさけられません。」


「むぅ・・・、よし、ではこうしよう。

魔王の手先がその力を発揮したためやむなく退治したと。」


「死体を持ち帰れませんが、それはどうしやす?」


「ふむ・・・、それは消滅したということでいいか。

この火傷もせいぜい誇張して広めるとしよう。

私の罪が浄化された証だとかなんとか言ってな。」


「何割かの民衆には納得してもらえるでしょう。

軽い処分で避けられるといいのですが・・・。」


「いずれにせよ脆い地盤を固めんとな。

動けるようになり次第まず町に戻るぞ。」



 手傷を負いながらも、当初の目論見が崩れながらも

たくましく立ち上がろうとするロブ。


 彼の新たな計画がどうなるかは

まだ誰にも分からない・・・。


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