その3 決着

「《フォルス・アウート》!」


 レナードが力強く言うと同時に

彼の体が赤くまばゆい光に包み込まれる。


 その場にいた全員がレナードの変化に注目し、

そして誰とはなしに驚きの声を上げる。



「な、なんだこれは・・・!

こいつは一体何をやっている!?」


「こりゃまさか『女神の祝福』・・・!?

ロブ様、今すぐ俺たちの後ろに!」


「祝福持ち・・・? だとしても私の魔法に捕らえられている状態で

何をしようというの・・・!?」


「レナード君、ど、どうなってるの・・・!?」


「この光・・・、そうかこれは・・・!」



 様々な反応を見せながらも、

最初に護衛の二人がロブの前に立ちはだかった。


 レナードは顔を俯かせたまま大きく息を吸い込み、

全身に力を込める。


 すると鎖の震える音が聞こえ始め、

次に軋む音が聞こえ、

最後に音を立てながら鎖が千切れていった。



「ど、どうなっておるのだ!?

拘束が解けているではないか!」


「まさかそんな、あれを力で千切るというの!?」


「ありえねえと言いたいが目の前で起こってるんだ、

こいつは今すぐに仕留めなきゃヤバいぜ!」



 驚きっぱなしの三人組だったが、

ロードリックだけは武器を抜いてレナードに切りかかろうとする。


 しかし、それよりも早くレナードが鎖を千切って拘束から逃れた。


 さらに、ロードリックが一瞬ひるんだ隙に

レナードが地を蹴って一気に懐へ潜る。



「なっ、早・・・!」


「はぁっ!!」


「ぐあっ!?」



 そのまま鎧の腹部へ掌底を叩きつけ、相手を吹き飛ばした。


 敵は鎧を砕かれながら山なりに飛んでいき、

残り二人の頭上を越えて地面に叩きつけられる。



「ロ、ロードリック!?」


「な、何が起こっている!?

お、おいアリーゼ、あいつを何とかしろ!」


「は、はい!」



 信じがたい光景に衝撃を受けていたところへ

焦ったような指示をされ、アリーゼが咄嗟にレナードへ手を向ける。


 しかしレナードが思い切り手を振るった瞬間、

突風が吹いて二人とも飛ばされてしまった。



「きゃあっ!?」


「うわぁっ!?」



 後ろに立っていたロブは地面を転がる程度で済んだものの、

前にいたアリーゼは大きく吹き飛ばされて気を失ってしまう。


 レナードは戦える二人が動けなくなったのを確認すると、

すぐにドロシーの元へ向かった。



「レ、レナード君、その力は・・・。」


「ドロシーさん、じっとしててください。

いま鎖を引きちぎりますから。」



 そう言いながら地面から伸びる鎖を取って

一本ずつ引っ張っていくレナード。


 鎖は大きな音を立てて千切れていき、

ドロシーが無事に解放された。


 しかしそこで、軽く飛ばされただけのロブが立ち上がる。



「ぐっ・・・、くそっ・・・!

おい、ロードリック! アリーゼ! しっかりしろ!

やつらが逃げるぞ!」



 部下たちに呼びかけるものの、

それぞれ身じろぎするばかりで起き上がることはできない。



「ドロシーさん、僕はマイナさんを助けます。

あのロブっていう男性は任せてもいいですか?」


「えっ? ・・・ああ、分かった。

私自身で決着を付けてくるよ。」



 二人は別れてそれぞれマイナの救出と、

残ったロブの方へ向かう。


 ドロシーはローブから本を取り出すと、

ページをめくりながら最後の敵へ近づいた。



「貴様・・・! おい、二人とも早く起きろ!」


「ロブ、お前にはいろいろと言いたいことがあるが・・・、

せっかくだから一つだけにしておいてやろう。」


「ぐっ、くそっ・・・! 貴様なんぞに私が・・・!」


「今ここで、私の友人たちを侮辱した罪を償え!

【フレイム・ショット】!」


「うっ!? ぐわあぁぁっ!!」



 ドロシーが手をかざして呪文を唱えた瞬間、

炎が飛び出してロブの顔面へ命中する。


 顔を抑えてのたうち回る相手に鼻を鳴らすと、

ドロシーはレナードたちの方へ戻っていった。

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