その7 マイナの下着

 しばらくしてドロシーも落ち着き、

三人はそれぞれ狭い部屋でなんとか寛ぐ。


 そこでふと、ドロシーが思い出したかのように

こんなことを言い出した。



「ああそうだ、せっかく旅に同行させてもらうんだ、

持ち物ぐらいは見せておいた方がいいかな?」


「そうですね、人が増えるわけだから

道具の補充もいりそうだし、

旅の道具とかは持ってます?」


「それが・・・、旅支度なんてしてなかったからね、

お金と衣服を引っ張り出すのがやっとだった。

これ、少ないが路銀にしてくれないか?」


「わっ、いいんですか?

確かにありがたいんですけど。

お財布を丸ごと渡されたらドロシーさんの分は・・・。」


「構わないよ、私では何を買えばいいか分からないから

今回だけは旅の支度を手伝って欲しい。

いずれ覚えるつもりではあるが・・・。」


「分かりました、

じゃあ明日の朝に道具を補充しましょうか。」


「お願いするよ。 ・・・そうそう、レナード君の旅の目的、

あの時に覗かせてもらったんだが、

幼馴染のお姉さんを探す旅なんだね。」


「あ・・・、そっか、マイナさんの秘密と一緒に

それを知ったんですね。

ええ、その通りです、といっても手がかりらしきものすらなくて・・・。」


「それについてなんだが、ここから近い町に

巨乳の女性がいるって話を以前聞いたことがある。

次はそこへ行ってみないかい?」


「えっ・・・? ほ、本当ですか!?

いったいどこへ、どういう女性が・・・!」


「お、落ち着いておくれ、

私も確かな情報を持ってるわけじゃないんだ。」


「そ、そうですか、すみません・・・。」


「後でゆっくり話すから、とりあえず荷物整理の続きをね。

えっと、他には何があったか・・・、

そうそう、これがあったね。」



 鞄の中を探っていたドロシーは、

そんなことを言いながら赤い布を取り出して見せる。


 それを見たレナードは首をかしげるものの、

マイナが上ずった声を上げた。



「えっ!? そ、それ、まさかブラジャー!?

すごい! 首都じゃこんなものが手に入るの!?」


「もちろん裏のルートから手に入れたものだけど、

これだけは絶対に予備が必要になると思ってね。

そうだこれ、まだ使ってないんだけど良かったら着けてくれないか?」


「うそっ、いいの!? きゃー嬉しい!

ちゃんとした下着がないから困ってたの♪」


「旅仲間になるんだ、物資も多少は分配しないとね。

もう少しあるけどどれがいいかな?」


「さっきのこれ! これがいいわ♪

さっそく着けてみていいかしら♪」



 言うが早いか、マイナはいきなり上着を脱いで

胸に巻いていた布を外し出す。


 マイナの行動にレナードは呆然としていたが、

同じ場所にいるのはまずいと考え部屋を出ようとした。



「あー良かった、サイズも合いそう♪

ほらレナード君これ見て♪ 似合うかしら♪」



 思いもよらぬところで下着が手に入ったのあ

よほど嬉しかったらしく、マイナが身に着けた下着を見せつける。


 肩紐もかけていない、脱ぎ掛けのような艶姿に

レナードの顔は真っ赤になってしまう。



「え、えっと・・・、に、似合うんじゃないでしょうか・・・。」


「目を逸らしながら言わないでよ、

ほらほら、もっとちゃんと見て♪」


「あ、は、はい・・・、に、似合ってます、よ・・・。」


「ほんと? ありがとう♪

ふふ、お金もないから諦めてたけど

まさか下着が手に入るなんて♪」



 すっかりご満悦のマイナだが、情熱的な赤色の下着と

それに収まる豊満な胸を見せつけられ、

レナードはすっかりくらくらになってしまう。


 鼻血が出そうになりながらも

なんとか熱を冷まそうとしていたが・・・。



「あ、これショーツも揃ってたのね。

じゃあこっちも履いてみましょうか。

・・・というわけでレナード君、悪いけど少し部屋の外で待っててくれる?」


「えっ? あ、はい、じゃあ出てますから、

着替え終わったら呼んでください。」



 部屋を出るように言われ、

レナードはそそくさと部屋を出ていく。


 二人のやり取りを見ていたドロシーは、

スカートを脱ぎ始めたマイナに声をかけた。



「着替えをするから出てもらうのは間違ったことじゃないんだが、

どうしてブラジャーを着けるときにそうしなかったんだい?」


「えっ? だって見て欲しかったから・・・。

レナード君ってどうも大きな胸が怖くないみたいだし。」


「いや、胸を見られて恥ずかしくはないのかい?

それとも見せたいというのは特別な理由が・・・。」


「ん~・・・、今までは隠し通さないといけないから

窮屈でしょうがなかったのよね。自宅でさえ気が抜けなかったし。

だけどあなたたちにはもう隠さなくてもいいから・・・。」


「だから見られても平気ってことかい?

まあ、分からないでもないが・・・、

しかしまだ少年とはいえもう独り立ちできる年頃の男性に対しては・・・。」


「心配しなくてもお尻やショーツは見せないわよ?

さすがに教育に悪いでしょうから。

だけどこの大きな胸なら問題ないでしょ?」


「まあ・・・、普通は私たちの胸に

劣情を催す男はいないわけだが・・・。」


「そういうこと。 ・・・うん、ショーツもいい感じね。

レナード君、着替え終わったから・・・、

おっと、部屋の中からじゃ外には声が届かなかったわね。」



 下着も替え、きちんと服を着たマイナは

そう言いながら部屋の外にいるレナードを呼びに行く。


 その間、ドロシーはこんなことを考えていた。



(確かに普通の男は巨乳では興奮できないが、

彼の秘密を覗いた私は知っている。

レナード君は大きな胸を恐れるどころか好きだということを。)


(とはいえ幼少の頃の触られたくない話だろうから

マイナさんに言っていいものやら・・・。

・・・少なくとも勝手に言うのはダメだろうなあ。)


(ま、彼にとっては困りもするがおいしい状況ではあるだろうし、

やはり彼女には黙っておくか。)


(それに・・・、せっかくこの胸を恐れない男が身近にいるんだ、

私もこの状況を楽しませてもらおうかな、ふふっ♪)



 ドロシーが楽しそうな笑みを浮かべたところで

二人が部屋に戻ってくる。


 マイナとレナードは、その笑顔に不思議そうな表情を浮かべながらも、

ともかく今度こそ休むことにした。


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