その2 隠密行動

「ふぅ・・・、なんとか落ち着きました。

じゃあそろそろ移動を、と行きたいところなんですが・・・。」


「ええ・・・、でも本当に手配書が回ってるとしたら

うかつに歩けないわね。」


「なんとか顔を隠しながら行きましょうか。

とはいえそのままじゃお店に行くのは難しいですから・・・。」


「顔を隠したままじゃ取引って難しい?」


「怪しまれるのは間違いないですね。

手配書が出回ってなければいいですが、そうでなければ・・・。」



 無事に町へ侵入できた二人だが、

そこからの計画を考えておらず、頭をひねり続ける。


 すると、マイナが何か思いついたらしく

明るい声を上げた。



「そうだわ、『闇ギルド』へ行きましょう!

あそこなら顔を隠してても問題ないわ。

というか大抵の人が顔を隠してるし。」


「やみギルド、ですか・・・? ええと、なんだったかな・・・。

確か違法な取引とかをするための場所、でしたっけ?

そんな場所が本当にあるんですか?」


「このくらい大きな町ならきっとあるわ、

どこにあるかは検討が付くから多分すぐに見つかると思う。」


「そこでなら集めた素材なんかも売れるでしょうか?

あとはいろいろと補充しないといけないし・・・。」


「できるわよ。 でも普通に売るよりも安く買いたたかれるし、

逆に買うのはかなりの高額だから覚悟しないと・・・。」



 マイナの言葉に相槌を打つレナードだが、

そこでふと疑問が浮かぶ。


 旅人の自分と違って町に住んでいた時間が長かったとはいえ

なぜそこまで裏の情報に詳しいのか、レナードは恐る恐る問いかけた。



「・・・あの、マイナさんはどうしてそんなに詳しいんですか?」


「・・・私の胸では着るものだって普通に買えないの。

巨乳用の服や下着なんて『違法』な品は、

それこそ闇ギルドでしか取り扱ってないわ・・・。」


「な、なるほど・・・。」


「私も・・・、あそこで胸が小さく見える下着っていう

うたい文句にそそのかされて粗悪品を買ったばかりに・・・。

着けてたらすぐに壊れちゃって、巨乳バレしてしまったの・・・。」


「あ、あの時はそういういきさつがあったんですか・・・。

なんていうか・・・、その、運が悪かったですね。」


「ええ、ありがとう・・・。」



 レナードは食堂での騒ぎを思い出しながら、

彼女がこの世界でいう『罪人』であることを改めて認識し、

レナードは少しばつが悪そうにする。


 ひとまず、現状にはありがたい情報の提供に感謝して

移動する準備に取り掛かろうとした。



「とりあえずは顔を隠しながら動きましょうか。

まず闇ギルドを見つけないと・・・。」


「あ、それも大事だけど、

私はもう一つ、この胸も隠さないとまずいわ。」


「そ、そうでしたね、えっと・・・、

一体どうやって隠すんですか・・・?」


「とりあえずこの布を巻いて誤魔化しましょう。

レナード君、手早く済ますから少し手伝ってくれる?」


「わかりました、じゃあ、何をすれ、ば・・・。」



 レナードの言葉は、マイナの行動によって

途中で止まってしまう。


 何せ、彼女は平気で服を脱いでしまい、

あっさりと生のおっぱいを曝け出していたからだ。


 本人にとっては一番好ましくない部分であり、

別の意味で他人に見せたくはないところではあるはずだが、

レナードに対しては多少なりとも抵抗が薄れているらしい。


 そのままマイナはレナードの反応に気が付くことなく

慣れた手つきで胸部に布を巻き始める。



「これをすると苦しいから嫌なんだけど、

贅沢は言ってられないわね・・・。

んしょっと、あ、これを背中で縛ってもらえる? できるだけきつく」


「はい・・・。」



 背中を向けながらの言葉に対し、

言われた通りに布を縛るレナード。


 固く縛られた結び目を確認し、具合を確かめると

マイナが改めてレナードに向き直るが・・・。



「これなら大丈夫そうね、レナードくんありがと・・・、

わっ! ど、どうしたの? その顔・・・!

鼻血がいっぱい出ちゃってるじゃない!」


「ら、らいりょうふれす・・・、

い、いきましょう・・・。」



 レナードにとっては大変に刺激の強いものを思い切り見てしまったことで、

興奮のあまり鼻から血が大量に流れ出ていた。


 鼻血の原因が分からず困惑するマイナを余所に、

レナードはふらふらと歩き始める・・・。

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