その3 闇ギルド

「次はあそこの路地裏に行ってみましょう、

だんだん人通りが少なくなってきましたから

間違いなく近付いてますよ。」


「細い道を通ったりお店の中を通りすぎたりと

結構入り組んだ道ですね、

前に来た時はこんな場所に近付いたこともなかったです。」



 安全に買い物するための、

二人は闇ギルドを探し求めていた。


 二人はそれぞれ顔を隠し、

マイナは胸に布を巻いて大きさをごまかし、

レナードは鼻に栓を付けている。


 そしてあちこちを通り抜けたところで、

二人はお店にすら見えない建物に辿り着いた。



「ここで間違いありません。

じゃあ行きましょう。」


「ここが闇ギルドなんですか?

普通の民家にしか見えないんですが・・・。」


「他の家と違って建物の並びが揃ってませんよね?

柵で外から入れないようにしてるんです。

正面の建物に入らないと他の建物へ入れません。」


「あ、本当だ・・・。 ということはあれが

実質的な門ってことですか?」


「そうですね、とはいえ通行証はいりませんよ。

私が話をするのでついてきてください。」



 そう言うと、マイナは堂々と歩き出して

正面に見える建物へ入っていく。


 レナードは鼻に詰めていた栓を抜きながら

後へついて行った。



「お二人さん、人の家になんのご用だい?

白昼堂々と強盗にでも入って来たのか?」


「申し訳ありません家主さん、

休める場所を探しておりまして、

よろしければお水を一杯恵んでいただけませんか?」


「・・・ちっ、隣の母ちゃんにでも頼みな、

そっから出られるよ」


「ありがとうございます。

・・・さあ、行きましょう。」



 良く分からないやり取りをぼんやりと聞いていたレナードは、

慌ててマイナについて行く。


 慣れたやりとりに頼もしさを感じながら建物へ入ると、

そこは食堂のような場所だった。


 レナードが周囲を見渡しかけたところで、

マイナが声を潜めながら話しかけて来る。



「ここではあまりきょろきょろしないでね?

あと、他に人がいるときは会話もこうして

誰かに聞こえることがないように。」


「あ、分かりました・・・。

それで・・・、ここは食堂なんですか?」


「ええ。 2階は宿屋になってるはずよ。

部屋だけ取ってから買い物をしましょう。」



 小声で会話を終えた後に宿屋の受付へ向かい、

ひとまず簡素な部屋を取るレナード。


 通常の数倍は高い宿代に驚きながらも、

小さな部屋が一つだけ取れた。



「本当に高いですね・・・。

数日分の宿泊費がなくなっちゃうなんて。」


「私もお金を出せれば良かったんだけど、ごめんなさい。

何せ着の身着のままに出てきてしまったものだから・・・。」


「それは仕方ありませんよ。

でもこの分だと道具の補充には足りないかも・・・。

モンスターの素材などを換金できる場所があればいいんですが。」


「そういうお店もあるから大丈夫よ。

恐らくこっちね。」



 そうしてマイナに連れられ、

レナードは道具屋などにも足を運ぶ。


 旅の途中で手に入れたモンスターの皮なども

通常より安く買いたたかれたりはしたものの、

なんとか旅の準備を整えることができた。



「これでなんとかなりそうですね。

後はもう食事をとって、すぐに休んで、

明日早くに出発しましょう。」


「助かるわ。 正直に言うと、

もうすぐにでも眠りたくなっちゃってて・・・。」



 順調に事が運び、やや安全な場所で眠ることができる。

それを考えるだけでマイナはすっかり警戒を緩めていた。


 そしてレナードもまた、思っていたよりも

簡単に準備が終わったことで安心してしまう。


 しかし、宿屋へ戻ろうと店を出てすぐ、

物陰から不意に声がかけられる。



「失礼、そこのお二人さん、

こっちへ来てもらえるかな?」


「・・・えっ? どちら様ですか?」


「レナード君、誰と話して・・・、

ま、待って! あなた誰ですか?

こんなところで声をかけるなんて、一体何の用?」



 慌てて事態に気付いたマイナが

相手を睨みつけながら返事をする。


 全身をローブで包んだ見るからに怪しいその人は、

どこか意地の悪い笑みを浮かべながら答えた。



「なぁに、大したことじゃないよ。

お二人さんにちょっと見て欲しいものがあってね。」


「見て欲しいもの・・・?」


「ああ・・・、『これ』さ」



 その『女性』はそう言いながら、

来ていたローブの前をゆっくりと開く。


 そして・・・、布地の少ない下着に包まれた

とても豊満な身体を、『巨乳』を二人に見せつけた・・・。

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